管理栄養士として働いているみなさん。「地域ケア会議」ってご存じでしょうか?
2015年より設置運営が努力義務となったこの会議。介護保険で運営されている施設で働いていても、直接的に業務として参加することは「ほぼ」ありません。そのため、介護施設で働いている管理栄養士さんでも、あまりご存じではないかもしれませんね。
実はこの地域ケア会議、いつか在宅で働きたいと思っている管理栄養士さんはもちろん、介護分野で働く管理栄養士にとっては、一度は経験しておいて損はない、とても学びになる会議です。
今回の記事では、地域ケア会議とは何か、地域ケア会議で学んだことについて、お話したいと思います。
地域ケア会議とは?
地域ケア会議は、その地域の実情にそって、より良い地域包括ケアを通して、高齢者の自立支援をより推進していくための会議です。地域包括支援センターというその地域の在宅介護の中核となる組織が主催します。
参加者は、地域包括支援センターの介護支援専門員、居宅介護支援事業所の介護支援専門員、医師、歯科医師、保健師や看護師、社会福祉士、リハビリ専門職、管理栄養士、薬剤師などです。
地域ケア会議では何を話すの?
地域ケア会議では、それぞれの目的や機能に合わせて、生活圏レベルの課題解決、つまり地域の課題を検討する地域もあれば、困難事例のケースを個別に話す地域もあります。
・介護支援専門員による 自立支援に資するケアマネジメントの支援
・地域包括支援ネットワークの構築
・地域課題の把握
などの目的のために集められた会議なので、その地域によって、議案は異なります。
私の参加している地域の地域ケア会議は「個別ケースの支援内容の検討を通して、介護支援専門員による 自立支援に資するケアマネジメントの支援」を行うことがメインとなっている会議です。
具体的には
① 居宅介護支援事業所のケアマネジャーが、今抱えているケースの中で、多職種から意見をもらいたい利用者のプランの情報を提供し、多職種に相談したいことや課題を挙げる。
② 多職種が事例をみて、専門職の観点から気になった点を伝えたり、質問をしたりして、ケアマネジャーがより良いケアプランを作れるようにアドバイスをする。
③ ケアマネジャーがより具体的に専門職に聞きたいことを聞いて、キャッチボールをしていく
④ まとめ
という流れで行われています。
おそらく、開催している自治体によっては全く違う流れでやっているところもあると思います。が、個別ケースを検討する会議は、だいたいどこもこのような流れではないでしょうか。
地域ケア会議に出席して学んだことや気づいたこと
次に、地域ケア会議に出席して学んだことや気づいたことをお伝えします。
地域で暮らす高齢者と管理栄養士の距離が非常に遠い
先ほど説明した通り、私が出席している地域ケア会議では、ケアマネジャーさんがよりよいケアプランを作るにはどうすればよいか、そのために多職種が提案をするというスタイルです。ケアマネジャーから情報収集をしてケアマネジャーを通して栄養指導を行うという場ではありません。
なので、地域の管理栄養士を頼ってほしいなと思ったときは、必要なサービスを提案するのですが、これが、なかなかないんですよね。
例えば理学療法士さんであれば「どのような運動をしたらいいかわからないのであれば、1,2か月だけでもいいので訪問リハビリを使って指導をしてもらったほうが良いケースだと思います」という提案をされていることがあるのですが。
私が、訪問の管理栄養士さんのサービスを紹介したいなと思っても、制度はあってもうちの地域ではやっていない。通っているデイサービスも特養や老健のように管理栄養士と繋がっているデイサービスでなければ、食事の相談は看護師さんにしているケースもよく耳にします。具体的なデータは持っていませんが、半分以上のデイサービスに管理栄養士はいないでしょうし…。
管理栄養士の界隈では「訪問、在宅へ!」という流れが盛んではありますが、まだまだ浸透していないなあ、管理栄養士と在宅で暮らす高齢者の距離はとても遠いなあと実感しました。
管理栄養士は「人」からではなく「課題」から入ってしまいがち?
地域ケア会議で課題を検討するにあたり、管理栄養士は、「課題」から問題解決をしようとする人が多いなあという印象を持ちました。これは、私もそうで、他の管理栄養士が出席した時の議事録を読んでもそう思うことが多いですね。
おそらく、給食の概念から物事を考えるというか、思考の癖なのかな?と思っています。
私たち管理栄養士は、栄養スクリーニングをして、ひっかかった人を抽出して介入、給食は集団に対して提供して、必要な人にだけ個別対応、という仕事をすることが多い専門職ですよね。
そのため、「課題」から入って、「人」をみるというか。…あれ、うまく表現しきれていない?
それに対して、ケアマネさんや看護師さん、リハビリさんたちは、初めから「個人」を見ている印象。「個人」を見てから「課題」を見つけているので、提案内容がより実現しやすい内容であることが多いなあと思います。
おそらく、これは悪いことではないし、もちろん、個人から課題を見る管理栄養士さんもいると思います。ただ、地域ケア会議に出席するまでは、あまり実感してこなかったので、気づきとして挙げてみました。
初めて地域ケア会議に参加した時、「普通食を食べていてBMIもやせ型じゃない、嚥下も問題なく自歯で食事をしている」ケースに、お恥ずかしながらノーコメントの状態で過ごしてしまったことがあって……。一見、課題がないようにみえるんですよ。でも、人をみてから課題をピックアップできるようになれば、ノーコメントな筈はないのです。
私が地域ケア会議でケアマネジャーさんに伝えてきたこと
次に、私が地域ケア会議でケアマネジャーさんにお話ししていることをいくつか挙げていきます。
定期的な体重測定は絶対にしてほしい
「食事については課題がない、管理栄養士に質問したいこともない」というケアマネジャーさんも、もちろんいます。ケースによっては一見なんの課題もありませんから…。
管理栄養士の私であっても「普通食を食べていてBMIもやせ型じゃない、嚥下も問題なく自歯で食事をしている」なら課題なし、ノーコメントで過ごしてしまったことがあるくらいなので、そりゃあそうだと思います。
でも、必ず「定期的な体重測定」はするように提案しています。
詳しく聞いてみると、デイサービスに通っていなければ体重を測定する機会がない、体重は把握しているけれど半年前の数値、ということも結構あります。
「いつの体重か」まで踏み込んで聞いてみると課題がどんどん出てくることも。
そして、
・食事に問題がない人ほど、食事を見直す機会もないため、体重測定をしてほしい。
・定期的な体重測定をして、5パーセント(体重があれば5パーセントが何キロかも伝える)を目安に体重変動があれば、食事を見直すひとつのきっかけになる。
ことを伝えています。
特養や老健の通所サービスに行けば管理栄養士と繋がれること
食事について課題が山盛りなのに、相談先がなくて困っているというケースにもたまに出会います。
なので、この地域ではどこにいけば管理栄養士と繋がれるのかは伝えるようにしています。
例えば
「今はデイサービスの看護師さんに相談にのってもらっている」
「長男のお嫁さんが管理しているけれど、好きなものしか食べないらしい」
「病院の栄養指導を本人が理解できなかったみたいです」
とか。
どれも、管理栄養士の支援が必要なケースですよね。
残念ながら訪問に対応できる管理栄養士はいない地域(栄養ケアステーションも市を超えてしまう…)なので、特別養護老人ホームや介護老人保健施設の通所サービスを使えば、管理栄養士の支援を受けられると伝えています。
あわせて、低栄養リスク中・高であれば、施設管理栄養士が訪問をしてくれる制度ができたことも。(栄養改善加算)
老健のデイことデイケアは、デイサービスより料金が上がってしまうから利用できないかも…とか、いろいろ障害はあるようですが。「地域ケア会議」なので「地域のどこに管理栄養士がいるか」も提案事項の1つだなと思っています。
さいごに
地域ケア会議に出席するまで、地域で暮らす高齢者の課題は、教科書や研修資料の中の出来事でした。
高齢者施設で勤務していると「施設の中での高齢者」としか接しません。高齢者の課題というより、「うちの施設の高齢者の課題」としか直面しないのです。
地域ケア会議に出席することで、地域で暮らす高齢者がどのような支援を必要としているのか、管理栄養士として具体的に何ができるのかが、少し見えてきた気がします。
一昔前は「NSTカッコいい!」という風潮がありましたよね。(今もか?)昨今は「訪問管理栄養士カッコいい!」という風潮を感じます。でも、なかなか求人はないし、どんな世界なのか「生の情報」は、学会にでも入らない限り、入手しづらいですよね。
生活もあるからすぐに転職はできない、でも訪問や在宅に興味はあって、けど学会に入るのは敷居が高いなあ…という人は、ぜひ、地域ケア会議のメンバーになってみたらいいんじゃないかなと思います。地域包括支援センターに問い合わせをしたら(そこがハードル高い?)教えてくれるのでは?
ちなみに、うちの地域は「近隣介護保険施設の管理栄養士が持ち回り」でやっています。担当になっているときに希望すれば、ずっと継続してメンバーになれるようです。この辺りも地域によって違うと思いますが……。もし施設に勤務しているなら、地域に強い職種、相談員やケアマネに地域包括の知り合いはいないか聞いてみてもいいかもしれませんね。
コメント