老健や特養・介護施設の管理栄養士が行う栄養指導とは?

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施設の仕事

老健や特養・介護施設の管理栄養士が行う栄養指導とは?

「いつかは栄養指導がしてみたい。」

「栄養指導ができる職場に転職したい」

管理栄養士を目指した人なら、だれもが一度は思ったことがあるのではないでしょうか。

今回の記事では、介護施設における栄養指導について、解説します。

転職したいと思って眺めている求人票に書いてある「仕事内容:栄養指導」。果たして、それはあなたの想像している栄養指導でしょうか?といったことにも触れていきます。

介護施設における栄養指導にどんなものがあるのか、そもそも介護施設では栄養指導ができるのか?そんな疑問を解決していきましょう。

通常、介護施設の管理栄養士が「栄養指導」を行うことはない

まずは、栄養指導とは何かを定義しておきましょう。ここでいう栄養指導とは、その病態に応じた食事相談や食事療法を「医療保険制度」の中で行うこととします。

テンプレート的な栄養指導のイメージとしては…

患者
患者

ファストフードが好きなんですけど糖尿病で~…栄養指導を受けるように言われて~

管理栄養士
管理栄養士

1日当たりのエネルギーは1600kcalですね~…。まずは、ファストフードに行く回数を減らして……

こういうものですよね。

こういった「患者」に対して行う栄養指導は、医療保険の制度の上で外来栄養指導や入院栄養食事指導と呼びます。介護施設(老健や特養)に勤務する管理栄養士は、医療保険制度に基づいて仕事をするわけではないので、栄養指導を行うことはありません。

※一部介護保険で受けられる訪問栄養指導等は除く

介護施設の管理栄養士が行う栄養の指導とは

介護施設の管理栄養士が栄養指導を行うことはありませんが、老健や特養の求人の仕事内容に「利用者への栄養指導」と書かれていることがしばしば見受けられます。

きっと、求人票を書いている職員が考える「栄養指導」と私たち管理栄養士が医療保険制度上行う「栄養指導」は異なるものを指しているのでしょうね。だから、栄養指導を行わないはずの求人でも仕事内容に栄養指導が出てくるのでしょう…。

さて、栄養指導はしない介護施設の管理栄養士ですが、「その病態に応じた食事相談や食事療法を利用者や家族へ説明する」という業務はあります。次に、介護施設の管理栄養士が行う栄養指導に近い業務について、私の業務経験に基づいてお伝えします。

在宅復帰(退所)をする利用者・介護者への食事指導

私が、最も時間をかけて行う栄養・食事についての指導は、在宅復帰をする利用者や介護者(家族)に対する食事指導です。

私の勤務先は介護老人保健施設。介護老人保健施設は、終の棲家になる施設(特養)ではないので、利用者はリハビリをして元気になって、在宅生活へ戻っていきます。

在宅復帰をするにあたり、食事についての課題がある場合は、しっかりと説明しておかなければなりません。介護保険の制度上における「退所時訪問指導」までは行っておりませんが、退所前のカンファレンスでは食事や栄養についての説明をします。

よく議題にあがるのは…

よく行う栄養や食事に関する指導内容

・糖尿病の食事指導

・嚥下調整食の食事指導

・低栄養予防の栄養指導

といった内容です。

また、説明をする対象者は、利用者本人ではなく、ご家族や居宅のケアマネジャー、退所後に使う居宅サービス(ヘルパーやデイサービス)のスタッフになることが多いです。

在宅で暮らすことになる利用者様たちの近くに、栄養の専門家がいることはほとんどないのが現状です。

トロミ剤の使い方や、施設で提供している嚥下調整食の内容、その作り方などは、施設管理栄養士が正しく伝えておかなければ…と思う一方で、無理せず実践してもらえることの提案は、結構難しいですよ。

例えば…

キーパーソンである娘
キーパーソンである娘

施設利用前は、朝昼兼用で朝ご飯はあんぱんと牛乳。夜は宅配食を頼んでだけど半分以上残してたらしいですけど…。食事を届ける?毎食食べさせる?

いや…無理無理。仕事があるし。今後も食生活はこれでいいと思っていますけど…

なんて言われることも…。

家族にも生活があり、利用者にもできることに限界があります。1日3回の食事は、それだけ負担が大きい介護の一部なのです。

限られた時間と資源の中では、理想ばかり伝えるわけにもいかないけれど、正しい知識も伝えていかなければなりません。

正直、専門的な臨床栄養の知識はあまりなくても対応できる学生レベルでも大丈夫だと思っています。その一方で、応用力・人間力・コミュニケーション能力、地域資源を知ることなどが求められますね。

家族への食事・栄養状態の説明

管理栄養士は、介護施設で行っている栄養ケアを、キーパーソン(メインとなる家族)に説明しなければなりません。

現在はコロナ渦で開催されていないかもしれませんが、本来は3か月に1サービス担当者会議という会議が開かれます。これは、家族や本人、多職種が出席し、現状の共有や今後の展望について話し合う会議です。

管理栄養士は、サービス担当者会議にて、現在提供している食事の内容や、栄養ケアを行うにあたって課題となっていること、在宅生活を送るにあたって考えられる栄養課題などを説明します。

利用者へ食事や付加食の説明

利用者本人へ食事や付加食の説明をすることもあります。

例えば

利用者への食事の説明

・褥瘡対策のために付加した補助食品の説明

・食思不振の方への聞き取り、施設で提供できるものの提案

・食事について個別対応(治療食や嚥下食)をしていることについての説明

などを行います。

通所サービス利用者への栄養指導(栄養改善加算)

令和3年の介護報酬改定より、通所サービス(いわゆるデイサービス)を使っている施設の管理栄養士が居宅を訪問して栄養指導ができる仕組みができました。制度の名前は栄養改善加算です。

まだ、あまり広まっていない制度ですが、今後この加算算定に対して取り組んでいく管理栄養士が増えれば、活躍の場がどんどん広がっていきそうですね。

私は一度この制度を使って介入しできそうな事例があったのですが、金額の面で採用にならず、サービスを提供できないということがありました…。

さいごに

栄養指導がしたい!という学生さん・新人管理栄養士さんは多いと思います。そんなとき、求人票に栄養指導を書いてあったら、「(冒頭で紹介したテンプレート的な)栄養指導ができるんだ!」と思ってしまいますよね。しかし、介護施設ではそういった栄養指導業務はありません。

栄養指導ができると思ったのに…と、そのような求人に応募して、後悔する人が出ないように、今回の記事を書きました。

一方、「栄養の知識を使って誰かにそれを伝える」仕事がしたいのであれば、介護施設でも十分に取り組むチャンスはありますよ!

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