経口維持加算(Ⅰ)を算定するために行っている業務

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加算と書類

老健や特養などの施設では、経口摂取が難しい利用者様に対し、特別な支援を行った場合に算定できる「経口維持加算」があります。

栄養ケアマネジメントを行っている中で、嚥下調整食のための特別な配慮が必要であったり、他職種が連携しなければ安全にお食事をしてもらうことが難しい利用者様を支援した場合の報酬が「経口維持加算」です。

今回の記事では、経口維持加算Ⅰの算定要件や、そのために揃えておかなければならない書類についてお話します。

新人さん
新人さん

栄養マネジメント加算は分かったけれど、さらに踏み込んだ摂食支援をして、さらに加算も算定したいです…!

Nさん
Nさん

栄養マネジメント加算より

・制度が複雑
・他職種連携が必要
・定期的にドクターの指示が必要

など、算定のために行うべき業務が多いので、ぜひ参考にしてくださいね。

経口維持加算Ⅰの加算を算定するための前提条件と頂ける金額

経口維持加算の算定要件には、栄養マネジメント加算を算定していることが前提です。栄養マネジメント加算を算定していない場合は、まず栄養マネジメント加算から算定する準備をしてください。

経口維持加算は、1名の利用者に対し、1カ月当たり400単位を算定することができます。1単位10円で計算すると、約4000円が施設の売り上げとなります。

経口維持加算Ⅰの算定要件

経口維持加算Ⅰは、嚥下障害があるため、管理栄養士による栄養ケアマネジメントだけでは経口維持が難しい利用者様が対象です。

現に経口により食事を摂取している者であって、摂食機能障害(食事の摂取に関する認知機能の低下を含む。以下同じ。)を有し、水飲みテスト(「氷砕片飲み込み検査」、「食物テスト(food test)」、「改訂水飲みテスト」などを含む。以下同じ。)、頸部聴診法、造影撮影(医科診療報酬点数表中「造影剤使用撮影」をいう。以下同じ。)、内視鏡検査(医科診療報酬点数表中「咽頭ファイバースコーピー」をいう。以下同じ。)等により誤嚥が認められることから、継続して経口による食事の摂取を進めるための特別な管理が必要であるものとして、医師又は歯科医師の指示の指示を受けたものを対象とすること

その対象者に対し、月1回の他職種での食事観察(ミールラウンド)と、月1回の会議を行う必要があります。

そして、その結果をふまえた「経口維持計画」を作成しなければなりません。

経口維持計画は、老健協会がフォーマットを提供しているためこちらの書式を使用していれば、必須項目を落とすことはありませんので、この書式を使いましょう。

低栄養リスク改善加算との同時算定はできない

経口維持加算は、低栄養リスク改善加算と同時算定を行うことができません。

低栄養リスク改善加算は、利用者が「入所時の栄養スクリーニングで高リスク」となった場合に、月300単位を算定することができる加算です。

入所時に低栄養高リスクであれば低栄養リスク改善加算を算定することができるのですが、その方が経口維持加算の対象にもなる場合、同時算定ができないので注意してください。

Nさん
Nさん

経口維持加算のほうが点数が大きいので、両方算定できる場合は経口維持加算を算定するほうが良いでしょう。

経口維持加算Ⅰ算定にあたり行う業務

次に、経口維持加算Ⅰを算定するために行う業務を解説します。

手順①栄養ケアマネジメントだけでは経口維持が難しい利用者の選定

通常の栄養ケアマネジメントを行っている中で、嚥下調整食の必要性アリになっている利用者を選定します。具体的には、ミキサー菜やゼリー菜、ソフト食や軟菜とろみあん付などになっている利用者様です。

Nさん
Nさん

栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリングを行う際に、嗜好以外の理由で「嚥下調整食学会分類2013」のどれかに当てはまる食事を提供している利用者様は、嚥下調整食が必要と判定しているはず。

手順②嚥下機能の評価

嚥下調整食が必要な利用者様をピックアップしたら、嚥下評価を行います。

専門的に嚥下評価を行う職種も配置がない施設での嚥下評価の方法は「食物テスト(food test)」、「改訂水飲みテスト」などを行うことが一般的です。

これらは、比較的簡易な嚥下のテストなので、管理栄養士でも行うことが可能です。

Nさん
Nさん

私が行うときは、管理栄養士だけで行うリスクを考慮し、看護師立ち合いまたは、看護師に「今から●●さんの嚥下評価をしてきます」とステーションに声をかけてから行っています。

病院での詳細な評価である嚥下造影検査(swallowing videofluorography:VF)や嚥下内視鏡検査(swallowing videoendoscopy:VE)を行うことができれば理想的ですが、老健や特養でここまでの検査をすることはハードルが高いでしょう。

また、ST(言語聴覚士)の配置がある施設では、ST(言語聴覚士)が聴診器を使った頸部聴診法を行ってくれます。

Nさん
Nさん

管理栄養士は「嚥下」を専門的に評価できる職種ではないので、STの配置があれば、STから対象者を選定してもらうのも「あり」でしょう。

「認知機能に課題がある」ため算定できるケースも多い

原則、摂食嚥下障害があると認められている利用者にしか、この加算は算定できません。しかし、算定要件の中には摂食機能障害(食事の摂取に関する認知機能の低下を含む。)という記述があります。

つまり、「食事の摂取に関する認知機能の低下」が認められれば加算を算定することが可能です。

そのため、私は次の2点に該当すれば、経口維持加算の対象者としています。

①認知症の診断がある利用者で嚥下調整食を提供している
②H-DSRやMMSEといった認知機能のテストで認知機能に課題がある判定された利用者で嚥下調整食を提供している

認知機能に全く課題がない場合は、先ほど説明した嚥下評価を行いますが、

Nさん
Nさん

実際問題…ミキサー食やソフト食を食べている方で、認知機能に全く問題がない利用者様って…いらっしゃいますか?

手順③医師による経口維持計画の必要性(ドクター指示)

経口維持加算は、医師の指示がなければ算定を行うことができません。

そのため、先ほど行った嚥下評価や認知機能の評価を行った利用者様に対し、経口維持計画を作成する必要性があるのではないか、ということを、医師に進言します。

そこで医師より、経口維持計画を作成するように指示があれば、次の段階に進むことができるようになるのです。

医師の指示は、口頭ではなく、カルテの指示書や食事箋等に記載してもらうようにしましょう。実地指導の際に、口頭指示だけでは、医師の指示をもらっていないのではないか、という指摘をされてしまうかもしれません。

手順④食事観察(ミールラウンド)の実施

医師の指示をもらい、経口維持計画を作成することが決まったら、多職種での食事観察を行います。

参加する職種は、

・管理栄養士
・看護師
・介護士
・リハビリ(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)
・医師
・歯科医師
・歯科衛生士

これらの職種が一般的です。食事観察に参加する職種の指定はされていませんのが、可能な範囲で多くの職種に関わってもらいましょう。

私の施設では、管理栄養士、看護師、リハビリ職種、介護士、参加できるときは医師、が食事観察を行っています。

食事観察の記録方法は、こちらの書式を使ってば実地指導で指摘を受けることはないでしょう。

Nさん
Nさん

フリーの記述蘭が少ないから、使ってみて使いにくかったら、自分でフォーマットを作成するほうが使いやすいものができますよ。

ラウンドが終わったら、立ち話形式でもいいので、小さなカンファレンスのような話し合いをしておくと、色々な意見が聞けるのでおすすめです。決められて項目の評価だけでは見えてこない情報交換もできますよ。

手順⑤経口維持についての会議の実施

食事観察が終わったら、経口維持についての会議を実施します。

会議では、主に食事観察の結果の報告と、食事観察を行ってから会議日程までの間で起こった利用者様の状態の変化の伝達をしています。

また、食事観察のときは栄養状態の評価よりも、食事環境の評価が中心となるため、利用者様の低栄養リスクレベルや、今どれくらいの栄養量を摂取できているのかの報告も行っています。

手順⑥経口維持計画の作成と家族の同意

食事観察と経口維持についての会議が終わると、こちらのフォーマットで作成できる経口時計画は完成しているはずなので、家族のサインをもらいます。

経口維持計画書は、フォーマット通りのものを使用してもかまいませんが、これでは栄養ケア計画書と経口維持計画書の2枚にサインをもらわなければならないため、事務的な手間が増えてしまいます。

そのため、経口維持計画は、栄養ケア計画に含めても良いとされているため、栄養ケア計画書に経口維持計画に入れるべき内容も盛り込んでおけば、書類は1枚で済みます。

私は、「栄養ケアおよび経口維持計画書」とい書類と、「多職種による食事観察および会議録(多職種による経口維持計画)」の2枚の書類を作成しています。

「栄養ケアおよび経口維持計画書」は普通の栄養ケア計画書に、食事観察や会議で気づいたことを記入し、こちらのフォーマットの内容からサイン蘭を除いたものを「多職種による食事観察および会議録(多職種による経口維持計画)」にしています。

こうしておけば、サインをもらう書類は、1枚だけで良いので、作業が簡略化できるためです。

また、「栄養ケアおよび経口維持計画書」も栄養ケア計画と同じくケアマネジャーが作成する施設サービス計画に入れ込むことが可能です。

経口維持加算も栄養マネジメント加算と同じく、サインをもらった月から算定することが可能です。経口維持計画書を作成したら、すみやかに家族様に説明し、同意・サインをもらいましょう。

食事観察、会議、計画作成は毎月実施すること

経口維持加算は、毎月算定することができる加算です。

そのため、食事観察や会議、計画の作成は毎月行う必要があります。

経口維持加算は、算定要件の中に「月1回経口維持計画を作成すること」ということが明記されているためです。

そのため、手順④から⑥は毎月行うことが必須。利用者様の状態に変化がなくとも、必ずこの手順は行う必要があります。

Nさん
Nさん

私は「栄養ケアおよび経口維持計画書」は、栄養ケア計画と同じ3カ月サイクル、「多職種による食事観察および会議録(多職種による経口維持計画)は毎月作成するようにしています。

家族様のサインは、栄養ケア計画と同じように3カ月ごとに必ずいただいています。

毎月の経口維持計画についての同意と説明は、利用者様の状態に変更がない場合はサインをいただいていません。

面会にこられた際に最近の状態をお話したり、電話をしたりして、その記録を残しています。

経口維持加算Ⅰの初回算定から6カ月が経過したら医師の指示は毎月

経口維持加算はいつまでも算定しても良いものではなく、「原則初回算定から6カ月」と決まっています。

しかし、医師が必要と認めた場合は、継続して算定することが可能です。

その場合、医師の指示は「毎月必要」となります。1カ月~6カ月は初回の指示のみで算定可能、7カ月目以降は、毎月医師の指示をもらったことを記録しておきましょう。

経口維持加算Ⅱを算定するためにはST・施設長以外の医師の協力が必要

経口維持加算には、ⅠとⅡがあります。今紹介した業務は、経口維持加算Ⅰの算定のために必要な業務です。

経口維持加算Ⅱは、経口維持加算Ⅰを算定した上で、「協力歯科」を定めている施設において、食事観察や会議に「言語聴覚士・施設長以外の医師・歯科医師」が参加した場合に算定することができます。

最後に

経口維持加算は、嚥下障害がある利用者様に、これからも安全に食事を食べていただくこと、その名前の通り「経口維持」をすることを支援した場合に算定できる加算です。

摂食嚥下機能が低下している利用者様の食事の介助や見守りは、自立の利用者様のそれよりも手厚くする必要があり、提供する給食の内容にも配慮が必要です。

介護報酬としては、それらの「努力に対する報酬」という位置づけで作られたと考えてよいでしょう。

今回の記事では、加算算定のために行わなければならない業務をまとめました。

加算算定のための業務を確実に行うことも重要ですが、摂食嚥下に課題がある利用者様に適切なケアを提供できるよう、日々業務に取り組みましょう。

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