介護施設には、運営基準で実施しなければならない委員会が定められています。委員会の構成メンバーは各職種・各部署の担当者や責任者なので、ひとり配置の管理栄養士は必然的にほとんどの会議に出席することになるでしょう。
今回の記事では、施設で開催している会議について解説していきます。
給食委員会
給食委員会では、給食に関する業務全体について話し合います。
主催:管理栄養士
出席者:各部署看護師・介護士・給食業者
開催頻度:月1回
議論内容:給食内容の検討
献立の人気・不人気のメニューについてだけでなく、配膳に対する作業について困っていることがあれば、意見を出し合う場です。
利用者様が美味しく楽しく食事をしていただくために多職種で様々な議論を行います。
施設管理栄養士は、厨房業者と現場をつなぐ役割として、議事進行やまとめ役を担っている施設が多いでしょう。
厨房を委託している施設では、厨房業者と看護・介護職員が顔を合わせて意見交換をする貴重な場にもなります。
栄養管理委員会
栄養管理委員会では、その名前の通り、栄養管理に関する内容を検討します。
主催:管理栄養士
出席者:各部署看護師・介護士・リハビリ担当者・ケアマネージャー
開催頻度:月1回
議論内容:栄養管理
経口維持計画を作成している施設では、経口維持計画に必要な多職種での議論をしたり、低栄養リスク改善加算を算定している施設では、算定要件を満たすための会議にしていたりするでしょう。
給食会議が「施設全体の食や栄養について議論する会議」とすれば、栄養管理委員会は「個人の食事・栄養状態を議論する会議」です。
接遇向上委員会・苦情委対策委員会
昨今、病院や介護施設でも気持ちの良い接客が求められており、そのニーズにこたえるために施設内の接遇を強化するための会議を行う場が接遇対策委員会です。
出席者:施設長、看護部長、事務長、看護師、介護士代、リハビリ科、栄養科
開催頻度:月1回
議論内容:職員の接遇の向上のための取り組みや苦情に対する対策
介護施設で求められている接遇とは
・挨拶
・身だしなみ
・態度
・言葉遣い
・患者対応
・業者対応・電話対応などのビジネスマナー
等です。
接遇を一度に全て行うことは難しいため、毎月テーマに沿った目標を立てたり、委員が接遇について課題があると思ったことについての議論を行ったりしています。
また、接遇が不十分であるために起こった苦情についても話し合いをしています。
身体拘束防止委員会
介護施設では、利用者様に安全に過ごして頂くために、身体拘束を行うことがあります。例えば、車いすから立ち上がり転倒のリスクが高い利用者様の車椅子ベルト(Y字ベルト)や手で皮膚をかきむしってしまう方に装着していただくミトンなどのことです。
安全に過ごして頂くために実施している身体拘束ですが、利用者様が「精神的・肉体的に安楽に過ごしていただく」ことを妨げることでもあります。施設はどうしたら身体拘束をせずに過ごして頂けるのかを検討し、身体拘束廃止に向けて努力をしなければなりません。
出席者:施設長、看護部長、事務長、看護師、介護士、リハビリ科、栄養科
開催頻度:月1回
議論内容:身体拘束についての現状報告と廃止に向けての意見交換
管理栄養士はあまり関わりが深くなく、専門知識を有している分野ではありませんが、「食事介助中は重点的な見守りが可能であるため、Y字ベルトを外して頂き、拘束時間を少なくする」というような意見が出ることもありますよ。
事故対策委員会
事故対策委員会では、起こった事故の報告と再発防止についての議論を行います。
出席者:施設長、看護部長、事務長、看護師、介護士、リハビリ科、栄養科
開催頻度:月1回
議論内容:起こった事故(インシデント・アクシデント)の報告と再発防止
管理栄養士の場合は、遅配や誤配、異物混入、食事変更の間違いなどが起こった場合にこの会議で報告することになるでしょう。
褥瘡対策委員会
褥瘡対策委員会では、褥瘡発生者の回診、褥瘡発生者のケアに対する多職種での議論を行います。
出席者:施設長、看護師、介護士、リハビリ科、栄養科
開催頻度:月1回
議論内容:褥瘡対策についての議論・職員全体の褥瘡に対するケアスキル向上・回診
褥瘡の発生原因はさまざまであり、毎日の処置や体交行う看護師や介護士だけでなく、ポジショニングについてはリハビリ担当者、栄養状態については管理栄養士が介入することで褥瘡の発生防止と早期改善を目指します。
また、職員の褥瘡ケアに対する知識にはばらつきがあるため、職員全体の知識やスキルの向上のための勉強会の企画・立案を行うこともあります。
感染対策委員会
感染対策委員会では、施設内であらゆる感染が起こらないようにするための会議を行います。
出席者:施設長、看護部長、看護師、介護士、リハビリ科、栄養科
開催頻度:月1回
議論内容:感染症の発生を予防するための対策を議論する会議
施設は集団生活の場なので、ありとあらゆる感染が発生する危険と隣り合わせです。
職員の感染に対する知識・技術の向上やマニュアル整備を行い、利用者様に安全に過ごして頂くための施設づくりを目指します。
・ESBLやMRSAなどの保菌者の情報共有
・インフルエンザ発生時の報告
・手指衛生の徹底
・嘔吐者に対する対応マニュアル
・ノロウイルス発生時の食器の取り扱い
・新型コロナウイルス対策
ケアプラン委員会
ケアプラン会議では、ケアマネがケアプラン原案を作成し、サービス担当者を集めて各職種がケアプランの内容を検討します。
主催:ケアマネージャー
出席者:施設長、看護師、介護士、リハビリ科、栄養科
開催頻度:週1回程度
議論内容:ケアプランを作成するための会議
介護保険で運営されている施設では「ケアマネージャーが作成したケアプラン」に基づいてサービスが提供されます。そのため、ケアプラン無しにはサービスを提供することができません。管理栄養士が作成する栄養ケア計画はケアプランの一部です。
施設運営委員会
施設には、現場レベルの会議以外にも、運営に関する会議があります。
主催:経営者
出席者:施設長、看護部長、リハビリ科責任者、栄養科責任者、事務部責任者等
開催頻度:規定なし
議論内容:施設運営全般についての会議
役職のない管理栄養士の場合、運営に関する直接的な業務はないかもしれません。しかし、「給食会社の変更の検討」などという場合、管理栄養士の業務に大きく影響が出るような議論が行われることもある会議です。
最後に:施設職員として栄養業務以外にも積極的に参加しよう
施設を円滑に運営するために、介護施設では多くの委員会を運営しています。
管理栄養士の業務の中心は、栄養ケアマネジメントや栄養管理、食サービスの向上ですが、私たちは管理栄養士である前に、施設の職員です。
委員会活動にも積極的に参加して、施設に貢献できる「職員」になれといいですね。
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