献立作成時に覚えておきたい行事食【1月から3月】

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施設の仕事

栄養士・管理栄養士として施設や病院給食の献立作成を行う際には、必ず押さえておきたい行事食。厨房だけで働いている栄養士さんには、なかなか想像がつきにくいかもしれませんが、入所・入院している方たちは、とてもお食事を楽しみにされています。また、昨今の社会情勢から、外出や面会ができない方たちにとっては「食事だけが楽しみ」という方も。

一方、時代の変化とともに、昔のように、家庭で行事食に触れる機会が少なくなっていることから、栄養士の中でも、行事食に少し疎い人も増えてきたなと感じています。

私もかつてはその1人で、1月の行事食はおせちと七草粥くらいしか、献立に入れられていないこともありました。特養の厨房時代(委託)は、施設の管理栄養士さんから、「おしるこが出なくて利用者さんが悲しんでいる」といわれたり、委託で地元ではない献立を遠隔で作成した際には、鏡開きの日程がおかしいといわれたり。

そこで、今回の記事では、私が献立作成をする際に、暦通りの行事食として、確実に押さえているポイントをまとめました。

同業者の栄養士さんのメモに、これから献立作成にチャレンジする若い栄養士さんに、後輩にイチから説明するのが少しメンドクサイなというときにも、役立ててもらえたらと思います。

1月の行事食

1月に「暦通りに提供したい行事食」は4つです。

暦の上の行事食

・おせち料理(1月1日)

・七草粥(1月7日)

・鏡開き(1月11日)

・小豆粥(1月15日)

Nさん
Nさん

1月は、1年で1番行事食が多い月ですよ。

1月の行事食献立:元日~三が日(おせち料理)

おせち料理は、節句に作られる料理の総称でしたが、節日のうちお正月が最も重要であるから、ということから正月料理を指すようになりました。おせち料理の原型は弥生時代にできていたといわれ、非常に歴史のある行事食です。

おせち料理は、祝い肴、煮しめ、酢の物、焼き物、で構成されていることが一般的ですが、地方により、その構成は異なります。

祝い肴

黒豆・数の子・田作り(ごまめ)・たたきごぼう(酢ごぼう)・紅白かまぼこ・伊達巻・くりきんとん・お多福豆

煮しめ

昆布巻き・陣笠椎茸(椎茸)・高野豆腐・手綱こんにゃく・芽出しくわい・花蓮根・矢羽根蓮根・八ツ頭(里芋)・たけのこ・金柑・梅花にんじん(金時人参)

酢の物

紅白なます(にんじん・大根)・酢レンコン・菊花かぶ・ちょろぎ

焼き物

ぶりの焼き物・たいの焼き物・えび老の焼き物・鰻の焼き物

おせちで一般的に使う食材を書きました。給食では、使用できる食材に限りがありますので、これらを栄養価や価格を考えながら組み合わせていくことになることが多いでしょう。

最近は、既製品でも美味しい商品がたくさんあります。おせちで使用する食材に限らず、華やかな練り物や巻物などを使って、豪華な献立ができると良いですね。

1月の行事食献立:7日(七草粥)

七草粥は、1月7日の朝に食べる行事食です。春の七草を使った、シンプルな塩味のお粥を指します。その年の無病息災を願う、正月の祝い膳で弱った胃腸を休めるために食べるといわれています。

春の七草

せり、なずな、はこべら、すずな、ほとけのざ、すずしろ、ごぎょう

給食では、「七草パック」という便利なアイテムが販売されていいますので、それを使うと良いでしょう。

Nさん
Nさん

価格が合わない……という給食の現場では、大根の葉を七草に見立てて使うこともあります。

1月の行事食献立:11日鏡開き(おしるこ)

1月11日は「鏡開き」。お正月に年神様に供えた鏡餅を下げて食べ、無病息災を願う行事で「おしるこ」を食べます。

関西は、つぶあんで汁気のあるものを「ぜんざい」、こしあんで汁気があるものを「おしるこ」と呼びます。一方、関東は、汁気があれば「おしるこ」で、粒餡でもこし餡でも「おしるこ」と呼ぶそうです。

また、鏡開きは、一般的に1月11日ですが、関西では15日とすることもあります。地域によって日程が違うので、自分の育った地域と勤務先が違う場合は、調べてから献立を立てる方が良いですね。

Nさん
Nさん

ネットで調べるよりも、地元での生活歴が長い調理員さんに聞くと良いと思います。

1月の行事食献立:15日(小豆粥)

1月15日は、小正月です。元日から1月7日をお正月(大正月)と言うのに対し、1月15日のことを小正月(こしょうがつ)といいます。

1年の邪気を払うために、小豆の入ったお粥を食べる風習があるそうです。

Nさん
Nさん

栄養士として仕事をしていると、1月の行事食の締めを実感する。

1月のその他祝日など

1月は、行事食とはあまり関係がない祝日として、成人の日(第2月曜日)があります。

成人の日は「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます」日として1948年に制定されました。冠婚葬祭の“冠”のことです。地域によって、成人の日に食べる行事食があるかもしれませんが、全国共通で一般的な行事食はないようです。

2月の行事食

2月に「暦通りに提供したい行事食」は2つです。

暦の上の行事食

・巻き寿司(2月3日)

・チョコレート(2月14日)

最近は、おせち料理に既製品を使うことも増えているため、巻き寿司を提供する日は、1年の中で厨房が一番忙しい日かもしれませんね。

2月の行事食:2月3日節分(巻き寿司)

節分とは、季節の移り変わりをつかむために設けられた雑節のひとつで、立春の前日のことです。立夏、立秋、立冬の前日も節分となるようですが、現代の節分は、2月3日の節分をいいます。

節分といえば、恵方巻のイメージが強いですが、恵方巻きが全国で知られるようになったのは、なんと1989年のこと。(江戸時代から食べていた地域もあるようです)高齢者の場合は、「イワシ」や「豆」をイメージする方が多いかもしれませんね。

Nさん
Nさん

イワシや豆は病院や施設では提供が難しい……

節分の行事食である「恵方巻」「イワシ」「豆」の中で、一番提供がしやすいのは、恵方巻(巻寿司)ですよね。しかし、高齢者が多い病院や施設で提供する場合、普通の海苔に対する工夫が必要です。

海苔を一度フードプロセッサーで粉砕し、敷き詰めて使う、たまごシートで代用する、切れやすい海苔を使うなど、施設にあった工夫ができると良いと思います。

※2021年1月4日追記
2021年の節分は、2月2日です。2021年は37年ぶりに節分の日が移動(二十四節気の関係)しています。2022年も2023年も、節分は2月3日ですが、次は2025年も2月2日だそうです。

2月の行事食:2月14日バレンタイン(チョコレート)

バレンタインと言えばチョコレート。ですが、バレンタインにチョコレートを贈る習慣は日本だけのようです。その始まりは、昭和30年代にチョコレート会社が大々的に宣伝をしたことが始まりといわれています。

昭和30年は、昭和10年生まれ(2020年現在85歳)の方がちょうど20歳くらいだったころ。病院や施設給食の喫食者の方は、バレンタインの行事には十分馴染みがあるでしょう。

給食では、チョコレートを使ったおやつやデザートを提供することが多いのではないでしょうか。最近は、手軽にできるフリーカットの美味しいチョコレートケーキもありますよ。

2月のその他祝日など

2月は、行事食とはあまり関係のない祝日が2つあります。

2月の祝日

建国記念日(11日)

天皇(令和天皇)誕生日(23日)

行事食とはあまり関係のない祝日ですが、天皇誕生日は、お赤飯などを提供しても良いですね。

3月の行事食

3月に「暦通りに提供したい行事食」は2つです。

暦の上の行事食

・菱餅・ひなあられ(3月3日)

・ぼたもち(春分の日・3月20日頃)

3月の行事食:3月3日ひな祭り(菱餅・ひなあられ)

ひな祭りは、女の子の健やかな成長を祈る節句行事です。タイトルには菱餅・ひなあられと書きましたが、はまぐりのお吸い物やちらし寿司などを食べる習慣もあります。

菱餅

菱餅は、ひし形をしていて、上からピンク色・白色・淡い緑色をしており、それぞれの色は、雪の下から植物(緑色)の新芽が芽吹き、桃の花が咲く(ピンク色)ことを表しているといわれています。

餅は窒息の原因になりやすい食材なので、高齢者が多い病院や施設では提供が困難でしょう。バットに3色のゼリーを作ってひし形に切ると、菱餅らしいおやつができますよ。

Nさん
Nさん

色の順番を間違えると台無しなので、献立を立てるときだけでなく、作るときも要注意。色の成り立ちを覚えておくと、間違うこともなくなるのでオススメ!

ひなあられ

ひなあられは、雛人形を外に持って出かける際に野外で菱餅を食べるようにしたことが由来とされています。関東では米粒状、関西では丸い粒状をしています。どちらも、色は、菱餅と似た色をしているのが特徴です。

最近では「ふんわりタイプ」のひなあられも売られているため、病院や施設ではふんわりタイプのひなあられを使うことをおすすめします。

はまぐりのお吸い物

はまぐりの貝殻は、対でないとぴったり合わないということから、夫婦が仲睦まじくあることの象徴とされています。女の子が良い人と結婚できることを願って、ひな祭りにははまぐりのお吸い物を食べるようになりました。

Nさん
Nさん

一般的に販売されているのかわかりませんが、一度だけ業者さんからはまぐりの形をした麩をすすめられたことがあります。継続して流通するのであれば、使いたい。

ちらし寿司

ひな祭りはちらし寿司を食べる習慣がありますが、ひな祭りにちらし寿司を食べることには、特に明確な由来はないと言われています。

ちらし寿司は、4つのメニューの中では、最も病院や施設給食で提供がしやすいメニューですよね。菱餅、ひなあられ、はまぐりのお吸い物の提供が難しい場合はちらし寿司を提供しておくのが無難だなと思います。桜でんぶを使って、「ひな祭り(桃の節句)らしいちらし寿司」の盛り付けを考えましょう。

3月の行事食:3月20日頃 春分の日(ぼたもち)

春分の日とは、昼と夜がほぼ同じ長さになる日のことで、毎年3月20日か、21日のどちらかが、春分の日として祝日になります。また、春分の日は、お彼岸でもあります。

餅は、五穀豊穣を願うために、小豆は魔除けの象徴として食べられるようになりました。

春分の日はぼたもち、秋分の日はおはぎを食べるといわれていますが、この2つは形が異なるだけです。ぼたもちは、「牡丹の花」にみたてて丸く、おはぎは「萩の花」に見立てて細長いだ円形に形成します。

最近は、冷凍の小さなぼたもちやおはぎを取り扱っているメーカーが多いので、給食ではそういったものを使うことが多いでしょう。

Nさん
Nさん

私は、「冷凍おはぎ」「絞った丸いこしあん」「ようかん」の3種類で提供することが多いです。意外と絞った丸いこしあんが人気です。

3月のその他祝日など

3月はその他に祝日はありません

続きは次回

今回は、行事食の1~3月分をまとめました。

次回、4~6月分をまとめ、全4回で、まとめきりたいと思います。

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