医療現場の記録方式として採用されている「SOAP」。学生時代、臨床栄養の教科書で見たり、実習先で勉強させてもらった管理栄養士の記録で見たりと、一度は目にしたことがあると思います。
今回の記事では、施設管理栄養士が自信をもってSOAPを活用できるように、現役老健管理栄養士が、その書き方をお伝えします。
SOAPの意味をおさらいしよう
「SOAP」は、カルテを記録する際の記入方法のことです。経過を文章で羅列するのではなく、4つの表題に合わせて記録していきます。
SOAPを使うと、対象者の「訴えたこと」と自分の考えた「アセスメント」の違いがハッキリ分かる、「アセスメント」に基づいて「どういう方針にしたのか」が分かりやすい、などの利点があります。
S(subjective):主観的情報 とは?
SOAPの「S」は、対象者が話した内容です。「主訴」を指します。
対象者が話した内容から得られた情報を書く項目です。
O(objective): 客観的情報
SOAPの「O」は、客観的な情報、つまり、診察や検査などから得られたことを指します。
A(assessment): 評価
SOAPの「A」は、医師が行った診断や、OとSの内容を元に分析したことを書きます。
P(plan): 計画(治療・ケアの方針)
SOAPの「P」は、Aの結果、変更した計画、ケアや治療の方針、指導した内容などを書きます。
問題に対する具体的な解決方法の記入を行います。
管理栄養士が栄養ケア経過記録に書いているSOAPの例文
老健管理栄養士が記入するSOAPの一例をご紹介します。
(もちろん、実際の患者様の情報を書くことはできないため、あくまでも事例です)
骨折のため入院した病院で、一度むせただけなのに、すぐ刻みにとろみがかかっている食事を提供されたことが嫌。施設でも基本継続すると言われたけれど、納得がいかない。水分にトロミがついていることも耐えられない。魚をほぐされたり、一口大も嫌。とにかく普通の食事が食べたい。
・食事は車いす上で自立、前後左右とも傾きなく姿勢保持可能
・HDSR21点、MMSE20点、認知機能に課題あるが意思疎通可能
・現在の食形態でムセなし
・栄養スクリーニング:BMI16で中リスク
・MWST、RSSTとも正常
・介護士・看護師への暴言、突発的に怒鳴るなどの行動がある。
・食事中の姿勢に課題なく、ムセもないが形態アップを試みる際は看護師見守り席への食席変更が必要。
・MWST、RSSTとも正常であるが、詳細な検査ができないためトロミの必要性については多職種での検討が必要。
・食事形態は一口大へと変更を行い、1週間看護師見守り席へ移動することする。
・一口大へ変更後、普通形態へのアップは再度評価を行う。
・1週間、トロミなしのお茶を50cc×コップ3個に分けて提供し様子観察を行う。
・認知機能に課題はあるが、会話内容をすぐに忘れるような様子はみられない。「ゆっくり食べてほしいこと、食席がしばらく変更になること、お茶は小分けにだすこと」を説明し、納得していただく。
私の施設にはST(言語聴覚士)がいないので、管理栄養士と看護師で状態をみて嚥下に対応しています。嚥下状態の評価は難しいのですが、このような例で対応しており、その際の管理栄養士の記録はこんな感じです。
さいごに:
SOAPは「経過記録」を書くための方針です。
問題点ごとに情報を整理することで、誰でも分かる内容にすることを心掛けましょう。今回、私が紹介した事例はSOAPが書きやすい事例ですが、認知機能に課題がある利用者様でSが書けないようなケースもあるります。その場合は、「S/O」としてまとめて情報を書いていることもありますよ。
しかし、現状、私の職場では管理栄養士(私)しかこれ(SOAP)を使っていません。
うちは、田舎の老健なのですが、SOAPでカルテを記入した際に、「なにこれ!?」と問題になったことがあります。一部の看護師さんと、リハビリのスタッフはご存知だったのですが、スタッフが高齢化している施設では、あまり浸透していないのかもしれません。
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