低栄養リスク改善加算を算定するために必要な業務(2021より廃止)

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加算と書類

低栄養リスク改善加算は、その名前の通り、低栄養リスクが高い利用者様の栄養状態を改善することに対して算定ができる報酬です。

今回の記事では、この、低栄養リスク改善加算算定のために必要な業務についてまとめました。

この記事は、2020年8月19日時点のものです。2021年介護報酬改定により、この加算は廃止されました。

低栄養リスク改善加算の概要

低栄養リスク改善加算は、入所時の栄養スクリーニングで、低栄養「高リスク」に該当した利用者に対し、月300単位を算定できる加算です。

低栄養のリスクがより高い利用者に適切な栄養ケアを行うことに対する報酬ですので、栄養マネジメント加算を算定していることが前提条件

他にも、

・週5回の管理栄養士による食事観察

・他食種による栄養ケア計画についての会議

を行っている必要があります。

ケア計画作成に対し関わる職種は限られていませんが、医師、歯科医師、管理栄養士、看護師、介護支援専門員、その他職種のもの、と介護保険の解釈には記載があります。

経口維持加算療養食加算と同じく、医師の指示があること、も必須条件です。

なお、算定できる期間は、原則6か月間のみですが、2週間に1回の頻度で医師からの指示が出ていれば、継続して算定することも可能です。

低栄養のリスク改善加算の算定のために行っている業務

低栄養リスク改善加算算定のために行っている業務を説明します。

低栄養リスク改善加算は、栄養ケア計画作成の過程に、栄養状態が悪い方に対し、特別に行う手順が増えたという位置づけなので、栄養ケア計画作成方法や栄養マネジメント加算においての業務に不安がある場合は、そちらも合わせて確認してください。

①入所前栄養スクリーニング

入所前に栄養スクリーニングを行います。

栄養スクリーニングの詳しいやり方はこちらを参考にしてください。
栄養スクリーニングの結果、次に該当する場合は高リスクと判定します。

高リスクになる条件

・血清アルブミン値が2.9g/dL以下(3.0g/dL未満)
・体重減少が著しい(1か月5%、3か月7.5%、6か月10%以上)
・褥瘡を有する

このどれかに該当する方は、低栄養リスク改善加算の加算算定対象者となります。

逆に、これにどれも当てはまらない場合、低栄養の病名があっても、高リスクと判定しないため、低栄養リスク改善加算は算定できません。

Nさん
Nさん

当施設では褥瘡マネジメント加算を算定しているため、褥瘡有の方の加算は算定していません。(後で詳しくお話します)加算算定を行っている利用者様はアルブミン値で高リスクとなる方がほとんどです。稀に2回目や3回目のご利用で、過去の体重を正確に把握できている場合は、体重減少率でも高リスクとなる方もいます。

②入所前栄養スクリーニングをふまえた栄養ケア計画の作成と医師の指示


入所前栄養スクリーニングの結果をふまえた栄養ケア計画書を作成します。

Nさん
Nさん

低栄養リスク改善加算の算定には、医師の指示が必要なのですが、別に指示書を増やすと作業が大変なので、栄養ケア計画書に医師の指示を書いていただく欄を設けて、先生の指示をいただいていますよ。

栄養ケアの内容は、普通の栄養ケア計画作成と大差ありません。事前時集めた情報に基づき、行う栄養ケアを記載します。入所前では、補助食品はどれが良いか、当施設のどの食事形態が適しているかが正確に把握できないので、このときは仮計画のような状態です。

③入所日に利用者様の家族様へ加算の算定の説明し同意を得る

入所日に家族様に説明し、加算の算定と同意を得ます。
これは、栄養ケア計画に同意を頂く手順と同じです。

④週5回の食事観察を実施


週5回、食事観察を実施します。低栄養リスク改善加算の算定要件に、管理栄養士が週5回の食事観察を実施しなさいと書いてあるため、これは必須です。
もちろん、週5回の食事観察を実施した記録が必要です。記録を毎日記入することは大変ですが、フォーマットを工夫しておけば、そんなに業務負担は増えません。

私は、食事観察の記録用紙として、1.課題あり。2.課題なし。3.特変有り。4.特変なしと記載するようにしています。これレ点チェックで記載。横に詳細を記録できるようにしました。

そして、記録用紙の上部には、課題ありとなる条件を記載しています。つまり、食事を問題なく全量摂取できていれば課題はないわけです。食事観察の記録は、課題なしにレ点を入れるだけで終了。とても簡単。

もちろん、食事環境に課題がある利用者様の場合は、横の備考欄に詳しく状況を書いていますが、食事観察の記録がネックとなり、加算算定ができてい管理栄養士さんはこの方法を参考にしてみてはいかでしょうか。

Nさん
Nさん

Alb2.9g/dL、食事10割摂取、という方でも算定できる加算です。取りこぼしたらもったいないですよ。

なお、管理栄養士が有給休暇などでお休みをいただいている場合は他の職種が実施してかまいません。介護職は必ずフロアで利用者様の配膳や下膳、食事記録を書いているはずですから、それを書き写して申し送ったという処理をしても良いでしょう。

⑤月1回の栄養ケアについての会議


月1回、利用者の栄養ケア計画を作成するための会議を実施します。

会議の出席メンバーは決められていませんが、医師、看護師、管理栄養士の他、介護職やケアマネージャー、リハビリ担当者などが出席することが望ましいでしょう。私の施設では経口維持会議と一緒にこの会議を行っています。

⑥毎月栄養ケア計画を毎月作成し、家族へお知らせする


栄養ケア計画は、通常3か月に1回見直し、作成しますが、低栄養リスク改善加算の算定を行っている場合は、週5回の食事観察と多職種で行った会議の結果をふまえて作成した栄養ケア計画を毎月作成しなければなりません。
そして、その計画書は利用者および家族の同意を得なければならないので、同意を得た記録(サインをもらわないなら、電話をした記録など)を残しておきましょう。


なお、栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリングの頻度は、高リスク者なので、低栄養リスク改善加算の算定の有無に依存せず、栄養マネジメント加算算定と同じ2週間ごとです。

⑦6か月が経過した場合、原則算定はできないので算定終了


低栄養リスク改善加算を算定できる期間は、原則6か月です。6か月を過ぎたら、加算を算定することは「原則」できません。

Nさん
Nさん

そもそも、6か月間も高リスクで、いっこうに改善がみられないのであれば、栄養ケア計画が悪い…あんまりいい栄養ケアを実施していない、または利用者様の状態が栄養に限らず全般的に良くない状態ということが多いでしょうね。うちは老健なので特に…。

⑧継続する場合は、2週間に1回医師の指示が必要

低栄養リスク改善加算を6か月を超えて算定する場合は、医師の指示が2週間に1回必要です。私の施設ではこの加算を算定している方の多くは3か月目の見直しのときには中リスクに上がるか、または全身状態が悪く退所されていることが多いので、6か月以降継続して算定したことはありません。

Nさん
Nさん

医師の指示は2週間に1回なので、栄養スクリーニング書に指示欄を作成すれば、書類管理業務を簡素化できると思いますよ。

褥瘡マネジメント加算と低栄養リスク改善加算の同時算定についての解釈

「褥瘡を有する場合であって褥瘡マネジメント加算を算定している場合は、低栄養リスク改善加算は算定できない」とあります。褥瘡がある人は、褥瘡マネジメント加算を算定している場合に低栄養リスク改善加算を算定してはいけない、読み替えると褥瘡マネジメント加算を算定していなければ低栄養リスク改善加算を算定できると読めます。

褥瘡マネジメント加算は1名あたり1月10単位。低栄養リスク改善加算は300単位ですから、入所時に褥瘡があるため高リスクとなった利用者は、低栄養リスク改善加算を算定し、褥瘡マネジメント加算を算定しない方が、高い加算を算定することができると。

つまり、褥瘡を有する方は褥瘡マネジメント加算を外して、低栄養リスク改善加算を算定すればよいのです。

しかし、老健協会は、「R4 システムにおける褥瘡マネジメント加算フロー」にて、「褥瘡「有」の利用者に低栄養 リスク改善加算を算定したい 場合、全員に褥瘡マネジメン ト加算が算定できなくなる」と発表しています。

つまり、老健協会の判断によると、100床の施設において、褥瘡ありの利用者様に低栄養リスク改善加算を算定した場合、その他全員から10単位×100名=1000単位を算定できたが、該当の利用者に300単位を算定したばかりに、1000単位を取りこぼすことになってしまいます。

これは解釈が難しいところです。実際に加算の算定の可否を決めるのは各都道府県なので、都道府県が判断の決定を持っているので、都道府県の介護保険を取り扱っている部署に質問状を送り、回答してもらうと良いと思います。

青本だけを読むと、「褥瘡マネジメント加算を対象者だけ外して低栄養リスク改善加算を算すればよい」と解釈できなくもないので、ややこしいです。

ちなみに、これは「褥瘡を有する場合」です。低栄養リスクが「高」になった理由が体重減少率や血清アルブミン値であった場合は、褥瘡マネジメント加算と低栄養リスク改善加算を同時算定することも可能です。

経口維持加算との同時算定はできない

低栄養のリスク改善加算は、低栄養のリスク改善加算との同時算定はできません。

経口維持加算はⅠが400単位、ⅡはⅠと合わせて500単位を算定することができるため、経口維持加算の対象となる利用者様の場合は、低栄養のリスク改善加算より経口維持加算を優先的に算定することになるでしょう。

Albで高リスク判定となった場合、血液検査を行う頻度は?

老健では血液検査をあまりしていない施設も多いと思いますが、アルブミンの採血をどこかで行わなければ、栄養ケア計画の目標(低栄養の改善)に対し達成したか、改善傾向にあるのかがわかりません。
このあたりも、介護保険の制度で義務付けられているようではないので、各施設の医師の判断によって、採血の頻度は異なると思います。

私の施設では、高リスクの方は入所後1か月、その後、高リスクの方は3か月、6か月、と栄養ケア以外のケアプラン見直し頻度に合わせて血液検査を実施しています。

さいごに

低栄養リスク改善加算を算定する流れについてまとめました。

こうやって書きだしてみると、手順はいろいろありますが、基本的には栄養マネジメント加算を算定し、栄養ケアマネジメントを行っている管理栄養士であれば、追加で行わなければならない業務負担はあまりないのではないでしょうか。

強いて言うならば週5日の食事観察と会議ですが、会議はもともと給食会議をやっているでしょうから、そこに短時間ででも組み込むことができればOK。

栄養ケアマネジメントを行う上で、高リスクに該当した場合、週5回行っていない又は記録はないとしても、低栄養の利用者様として、深く介入しているまず。

それを、週5回の食事観察と他職種での会議を義務付けることで算定できる加算を作ってくれたわけです。より細やかな栄養ケアに報酬を与えるために新設された(といっても2018年です)加算だと私は解釈していますよ。

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