栄養ケア計画書や栄養スクリーニング書の新しい書式と、実施に関する考え方についてが発表されました。
リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(介護保険最新情報vol.936)
今回の記事では、この発表を受け、私なりにかみ砕いて理解したことをお話しします。
新しい栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング書はこれだ!
まずは、新しい栄養スクリーニングアセスメントモニタリング書の画像を貼り付けます。画像が大きくなるのでタイトル等は省きました。
「栄養・摂食嚥下スクリーニング・アセスメント・モニタリング」に変更になっています。
これまでは、管理栄養士が行う栄養評価のみで書ける項目ばかりでしたが、今回からは、経口維持計画にて評価していたような内容まで、こちらの書式に入っています。経口維持計画を作成していた利用者様の書類は簡略化されますが、それ以外の利用者様に対する評価項目は増えていますね。
特に、言語聴覚士や歯科衛生士の専門分野で管理栄養士は少しかじる程度、その専門職が配置されていれば管理栄養士が評価する項目ではないというところも、今回の書式には入っています。
専門職が配置されていない現場では、管理栄養士が評価しなければならない分野が増えていますね。特に、「10年以上前に栄養学科を卒業した人はカリキュラムになかった」ことまで、管理栄養士評価することになっているという印象です。各種勉強会で学習していかなければなりませんね。
また、各種専門職が配置されている職場では、管理栄養士だけで書類を作成するのではなく、1枚の書類を他職種で共有することになるんじゃないかな、と思いました。
低栄養リスクの判定項目は大きな変更はなし
低栄養リスクの判定項目には大きな変更はありません。
ここは、これまで通り判定していけば良いでしょう。
食事摂取量(75%以下を中リスクとする)はここには記載はありませんが、75%以下を中リスクとする基準に変更はありませんでした。
食生活状況等では「体重あたりの栄養量」の算出が必須に
食生活状況等では、大きく変わった項目として、提供栄養量、摂取栄養量、必要栄養量について、エネルギー・たんぱく質を「体重当たり」で記入することになりました。
ここは、この項目における一番大きな変更点です。
病院の栄養情報提供書に合わせる流れなのか、これまでトータルの栄養量で考える習慣がついていたので、ちょっと大変かなぁ…という印象。
経口維持加算をとっていなくても口腔関係の把握が必須に
これまでの栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング書では、「他職種による栄養ケア」の項目には、口腔関係の言葉はありましたが、詳細を評価するような書式にはなっていませんでした。そこが、次のような項目に代わっています。
これらは今まで「経口維持計画を作成し、経口維持加算を算定する」利用者様のみ評価しなければならない項目でしたが、ここに入ってきたので、低リスクでも、普通食を食べている人でも、全員評価することになっています。
管理栄養士は100床であっても1名配置ですよね、うちもそうですけど。全部の利用者さんに対し、ここまでひとりで評価できるのか、少し不安もあります。看護師や介護士への聞き取りを行いながらやる…か?「食後の咳」なんて、つきっきりで見てないから、ぶっちゃけ、全く分からない。
あと、12時から13時で評価して、食後の状況までみてたら、管理栄養士はいつ休憩とればいいんでしょうか…なーんて(笑)
ここまで、大変といい過ぎた部分もありますが、2名配置で手分けして行っていけば、ひとりひとりの利用者様と丁寧にかかわっていけるので、とても良い改定だと思います。
経口維持計画の作成がとても簡易に
栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリングが大変になった変わりに、経口維持計画はとても簡易になっています。
経口維持計画を作成する際の食事観察記録、職種ごとのコメントなどが大幅にカットされ、毎月の記録はこれだけでよくなっています。
自治体によっては「経口維持計画書」を毎月作成しなさいという自治体もありますので(正式にはこう書かれていますが、自治体や担当者によっては、変更がなければ作成してなくても実地指導で指摘しない方もいたりする)、この書類だけでOKなのかは各自治体に確認する必要性があるとは思っています。
栄養ケア・経口維持計画書の新しい様式はこれだ!
次に、栄養ケア・経口維持計画書の新しい書式です。
一番大きいところとして「利用者または家族のサイン欄がなくなっている」こと。
これも、Q&Aや自分の施設がある自治体の解釈を待つ必要があると思いますが、「サインを求める必要はなく説明日の記録だけでいい」ような書式になっていますね。
これは私の解釈ですが、これであれば、「郵送した日を書いておけばOK」なんてことになれば、かなり業務は簡略化できると思いました。
また、計画書の中に、どの加算を算定するのかチェックリストがあるので、加算算定についての同意書を作っていた施設は、かなり業務負担が減るんじゃないかなと思いますよ。
リハビリ・口腔とひとまとめにした計画様式も発表に
こちらは、栄養ケア計画書が大きく変わったわけではありませんが、リハビリと口腔が同じ書式で作れるものも発表されています。
施設として管理しなければならない書類が減るので、助かる反面、「栄養ケア計画を変更するときに単独で変更できない」というデメリットもあるのかな?なんて考えています。
栄養マネジメント強化加算の具体的な業務内容は?
次に、栄養マネジメント強化加算算定時に必須となる具体的な業務が発表されました。
現状の栄養マネジメント加算(これまでは加算、2021年度改定からはやらなかったら減算とされている業務です)を算定していない、そこを理解できていない場合は先にこちらを見てみてくださいね。
事前情報では「低栄養リスクが高い利用者」とされていたと記憶しているのですが、「中リスク」も週3回の食事観察となっているので、業務負担としてはかなり増えると考えられますね。
ここには記載されている部分を抜粋していませんが、ここからさらに厚生労働省が作成するシステムへの報告も必要です。
電カルが導入されている施設であれば、そこが連携しますが、エクセルなどで計画作成をしている場合は、入力する項目が増えますので、システムを導入していない施設は少し大変かもしれません。
栄養マネジメント強化加算は「管理栄養士を50対1以上」配置していること、「管理栄養士と別で栄養士を配置している場合は70対1以上」配置していること等の要件もありますので、50床を超える施設は、これらの業務を実施しても、算定要件を満たさないことがあります。
通所の栄養アセスメント加算・栄養改善加算についての業務
次に、通所の栄養アセスメント加算についてです。
通所の栄養アセスメント加算を算定するためには、「栄養マネジメント強化加算の算定に規定する人員以上の管理栄養士の配置」が求められています。つまり、100床に対して管理栄養士1名配置、栄養マネジメント強化加算は算定しない、栄養アセスメント加算だけ算定する、ということはできません。100床で管理栄養士2名配置の場合でも、ベッド回転率が100%であれば、この加算は算定できません。
なお、通所の「口腔・栄養スクリーニング加算」と「栄養アセスメント加算」は同時算定をすることができません。
これまで、通所系サービスでは管理栄養士が介入することに対する報酬がほとんどないくらい小さいものでしたが、栄養アセスメント加算ができたことにより、報酬体系上も介入しやすくなったのではないでしょうか。
また、この加算は「栄養マネジメント強化加算」に必要な管理栄養士以上の管理栄養士を配置していなければならないので、これらの加算を算定して栄養管理体制を強化するためにも、人員を増やした場合は必ず算定したいところですね。
さらに、栄養改善加算では「必要な場合」主治医の指示を受けることや「居宅を訪問すること」ができるようになりました。
主治医との連携は施設と医院との関係性の中でどのようにしていくのか、また、これまで施設にいた管理栄養士が「訪問栄養指導」に近い業務を行うことができるようになった等、期待が高まりますね。
管理栄養士さんに相談してって時々聞くけど、どこにいるのかわからない…
通所リハビリやデイサービスに行けば管理栄養士さんと会えるよ!
「管理栄養士の名前は聞いたことがあるけどどんな専門職かわからない」「食事のことで困ってるけど、誰に相談していいかわからないからなんとなく看護師さんに聞いてる」というのをたまに聞きます。通所系のサービスを使えば、管理栄養士の指導を受けられると広まっていけばいいな……。
さいごに
介護報酬改定2021で改定される内容が確定したところで、少しずつ各所で情報が公開されていますね。
今回は、リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(介護保険最新情報vol.936) を受けて、私が読み取ったことをまとめてみました。
今回は、あくまでも私が読み取ったことをまとめています。仕事に活かすときは、必ず原文を読んでください。まだQ&Aが出ていないし、実際の運用は各都道府県の指導に基づいて行ってくださいね。
あと、記録する項目や評価する項目が増えたので、管理栄養士に事務職兼任させたり、送迎させたりしてる施設は、業務見直せよ!って思ったりもしました。私はしていませんが、結構身近で聞く話…。管理栄養士には栄養業務のみを。加算のために増員して、雑用させてる場合じゃないですよ。特に通所系は営業すればするほど利用者にも施設の利益にもなりますよね。結構「中リスク」の方って多いですもんね。
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