栄養管理体制加算の取り方・記録・様式は?

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加算と書類

令和3年度介護報酬改定より、認知症グループホーム(介護保険制度では「認知症対応型共同生活介護施設」と呼ばれます)に栄養管理体制加算が新設されました。

この加算は、管理栄養士がいないグループホームでも、高齢者の栄養管理ができる体制を作ろう、そのためのアドバイスを管理栄養士にしてもらおう、そういった趣旨の加算です。

しかし、新設された加算なので、加算の取り方や実際の業務についての情報は少ないのが現状…。加算の取り方なんて分からないというグループホーム管理者、どうやってグループホームと関わったらいいか分からない管理栄養士が多いのではないでしょうか。

そこで、今回の記事では、系列のグループホームで栄養管理体制加算をとっている担当管理栄養士の私が、栄養管理体制加算について解説します。

管理栄養士の中には

??
管理栄養士

「認知グループホーム?なんだそれ?」

という方もいると思いますので、グループホームとは何かも含めて解説してきますね。

グループホームと栄養管理体制加算の解説

グループホームでは、認知症の診断を受けた高齢者が、認知症に対する専門知識があるスタッフの元でケアを受け、共同生活をしています。

グループホームの特徴は…

・認知症の診断を受けた方が入居
・要支援2または要介護1以上の認定を受けた方が利用できる
・市区町村が運営する
・1ユニットは最大9人までで小規模(ユニット型の場合)
・地域交流が盛ん
・掃除や洗濯などの家事を行いながら共同生活を送る

こういうところです。

グループホームは、認知症ケアに特化した施設です。老健や特養などは県の管轄にありますが、グループホームは市町村。地域に密着しており、グループホームのある市町村の住民しか使えないという特徴があります。

自分でできることは自分で行うことで、認知症の進行を抑えて、できる限り自立して生活できることを目指します。とはいえ、実際には認知症の状態によっては、家事をできない方もいますので、料理や洗濯の一部を家事として行いつつ、できない部分はスタッフが行います。

少人数制なので、もちろん管理栄養士の配置はありません。しかし、施設に管理栄養士がいないとなると、食事や栄養管理で困ることもしばしば。そこで、令和3年介護報酬改定で、管理栄養士が関わったことに対する評価として栄養管理体制加算が新設されました。

栄養管理体制加算とは?

栄養管理体制加算は、管理栄養士が、グループホームで働く介護職員に対して、「栄養ケアに係る技術的助言及び指導」を行ったことに対し、月30単位算定できる加算です。

小規模なグループホームに管理栄養士はいませんので、外部の管理栄養士の協力があれば算定できます。外部の管理栄養士とは、他の介護事業所、医療機関、介護保険施設、栄養ケアステーションの管理栄養士です。

「栄養ケアに係る技術的助言及び指導」とは?

栄養ケアに係る技術的助言及び指導とは、

・低栄養状態の評価方法
・傾眠、拒食、徘徊、多動など栄養ケアに関する課題への対応
・食事形態の調整及び調理方法
・その他日常的な栄養ケアの実施にあたり必要と思われる事項

です。利用者ひとりひとりの栄養ケアマネジメントを行うわけではありません。

栄養管理体制加算算定にあたり必要な記録

栄養管理体制加算の算定においては

  • 当該事業所において利用者の栄養ケアを推進するための課題
  • 当該事業所における目標
  • 具体的方策
  • 留意事項
  • その他必要と思われる事項

を記録しておくよう決められています。特に様式は決まっていません。

栄養管理体制加算にあたり行う業務

次に、栄養管理体制加算の算定にあたり行う業務の流れを解説します。

①グループホームに足を運ぶ

当たり前ですが、まずは施設を訪問します。

確認するポイントは管理栄養士によってさまざまだとは思いますが…

利用者のカルテの確認
受診の記録提供している食事内容
献立の内容
調理作業食品の保存状態
調理器具の取り扱い

等、実際にここに管理栄養士として自分が配置されていたらどんな仕事をするだろうか?と考えながら、グループホームの見学をしましょう。

②利用者の栄養ケアを推進するための課題を見つける

グループホームは、これまで管理栄養士が栄養管理をしてきていない施設です。数回ラウンドすれば、食材の取り扱いから栄養管理の体制まで、いろいろ意見したいことが出るはずです。

それを、栄養ケアを推進するための課題としてピックアップして、課題を解決するにはどうすれば良いのかを考えていきます。

例えば…

・Aさんは体重が5kg減ったと医師に相談をしている、Bさんは体重が3kg減っているけれど報告された記録がないな。
・とろみ材の使い方が統一されていないな、人によって濃さがバラバラだな。
・食品の衛生管理が不十分だな。
・朝食がパンとサラダ、ジュースやコーヒーになっていて、たんぱく質源がないな。

など、いろいろな課題がみつかるでしょう。

③課題を解決するための目標をたてる

次に、課題が見つかったら、解決するための目標を立てます。管理栄養士はずっと現場にいるわけではないので、管理者や介護リーダーなどと相談しながら、現実的な目標を立てましょう。

④課題を解決するための具体的な方法を提案する

目標を立てたら、課題を解決するための具体的な方法を提案します。
例えば…

・1か月間管理栄養士が献立を作成し、それをベースに運用して、栄養バランスのとれた献立を職員が理解する。
・献立作成のための基準を作る。
・とろみ材の使い方について、基準を作って掲示する。
・栄養スクリーニングを行い、リスクレベルが変わったときは医師に相談する。

このように、実際に現場が動けるような内容で、具体的な方法を提案していきましょう。

栄養管理体制加算の記録様式

栄養管理体制加算の記録については、様式が決まっていません。様式は決まっていませんが、

① 当該事業所において利用者の栄養ケアを推進するための課題
②当該事業所における目標
③ 具体的方策
④ 留意事項
⑤その他必要と思われる事項

の内容を記録するように決められています。

栄養管理体制加算に関する記録の例

次に、栄養管理体制加算に関する記録の例をご紹介します。

栄養ケアに係る技術的助言及び指導

担当管理栄養士:〇〇 〇〇
所属事業所:医療法人〇〇 〇〇病院
作成日:〇〇〇〇年〇〇月〇〇日

栄養ケアを推進するための課題 ・メニューで使われている食材ではたんぱく質量が不足している

・トロミ剤の使い方が統一できていない

・低栄養を疑う基準が担当者によって、バラバラになっている

・食品衛生

当該事業所における目標 ・食事摂取基準に基づき、栄養量を満たした献立作成ができる

・学会分類の「薄いトロミ・中トロミ・濃いトロミ」の濃度でトロミを管理する。

・栄養スクリーニングを行い、低栄養リスクのレベルが上がれば、受診時に主治医へ報告できるようにする。

・冷蔵庫の温度管理、器具の消毒についてマニュアルを作る

・保存食(冷凍)を保管する

具体的方策 ・1か月間、管理栄養士が献立作成を行い、栄養バランスの良い食事を職員が理解できるようにする。(4月)

・献立作成の基準・目安を作成する。(4月)

・トロミ剤を使用方法について、基準を作る(5月)

・栄養スクリーニング加算の算定開始と同時に、栄養スクリーニングの方法を指導する(6月)

・食中毒に関する研修を行う。(7月)

・食品衛生に関するマニュアルと記録用紙を作る(7月)

留意事項・その他 管理栄養士が毎月訪問し、進捗状況を記録する。

 

私は、月1回以上グループホームを訪問しています。実地指導上の記録は、加算要件を満たすので上記のような簡易なもので良いでしょう。

それぞれの具体案に対して、わかりやすい資料を作成したり、ミニ説明会を実施したりしています。グループホームは小規模な施設なので、全職員の顔を見て直接話をしたほうが良い内容であれば、時間をみつけて直接助言をしに足を運んだこともあります。

栄養管理体制加算の算定に関わり学んだこと

栄養管理体制加算の算定に関わり、私が学んだことをお伝えします。

「完璧な体制」を求めない

グループホームに指導へ行くと、どうしても自分の勤務先と比べてしまいます。でも、介護職員は栄養管理をするためにいるのではなく、施設全体の業務の中の一部が栄養管理で、食事作りなのです。

そのため、完璧を目指すのではなく、ひとつひとつ課題を見つけて、焦らずゆっくり、介護職員さんに負担がかからないように解決する方法を見つけていく必要があるなと思います。

管理栄養士はあくまでも「裏方」

幸い、私が関わっているグループホームは系列なので、顔見知りの職員がいたり、自分の勤務先の介護士と仲が良い介護士がいたりします。そのため、現場の人との距離が近く、全く外部の管理栄養士が来たという雰囲気ではありません。

それでも「専門家ぶって現場に指導をしにこないでほしい」と思っている従業員もいるだろうな…と思うことがあります。ミーティングをすると、「でも」「それは」「今まではこれで…」という意見を出す方もいます。それは、当然のことであり、むしろ良いことです。何が負担なのか意見が出ないと、いい解決策は出ないですからね。

あくまでも現場ファースト。管理栄養士の理想を押し付けるような指導は絶対にしてはいけません。

もちろん、多くの介護職員はこちらの話を聞いてくれ

・疑問点を解決できて嬉しい
・改善できた点が多くなった
・食中毒を出したらどうしようという漠然とした不安から解放された

という嬉しい言葉をかけてくれます。

管理栄養士はあくまでも裏方で助言をするだけ。実際に手を動かす職員が無理なく取り組める方法を提案したり、わかりやすい資料を作ったり、困っていたら相談にのったり、そういうスタンスでの関わり方が重要だと思います。

栄養ケアマネジメントはしないけど、栄養状態は把握しておく

グループホームには、栄養スクリーニング加算があります。この加算は、私たちが行う栄養ケアマネジメントの「スクリーニング部分だけを行う」ことを評価する加算です。栄養スクリーニングは介護職員や看護職員が実地してもかまいません。

これを算定していれば栄養スクリーニングのやり方を統一できますし、介護職員が医師や管理栄養士に報告・相談する目安を作ることができます。栄養スクリーニング加算の算定方法も、管理栄養士が指導しておくとベターですね。

この、栄養スクリーニングの結果は、定期的に確認しましょう。栄養ケアマネジメントを行うわけではありませんが、低栄養リスクが中以上の方の摂取状況は、必ず確認しています。もちろん、介入の必要があれば、栄養補助食品の利用を提案したり、リスクが上がった原因を考えたりしています。

国の想定よりも、「食事作りへの課題」が多いんじゃないかな…?

グループホームの管理者向けに行われた研修会資料や、ネットに出ている資料をたくさん読んだのですが、厚生労働省や介護保険課からは「管理栄養士から栄養管理のアドバイスをもらってほしい」と想定している加算ですね。

介護報酬の解釈には「低栄養状態の評価方法」「傾眠、拒食、徘徊、多動など栄養ケアに関する課題への対応」「食事形態の調整及び調理方法」について指導や助言をするようにと書いてあります。

実際にグループホームに関わった私の感想としては、現場の職員から聞かれることは圧倒的に「食事形態の調整及び調理方法」であるということ。

グループホームの介護職員は認知症ケアの専門なので、「傾眠、拒食、徘徊、多動」に対する対応は、私なんかより(勉強不足ならすいません…)うーんとプロフェッショナルです。

低栄養状態の評価方法に関しても、栄養スクリーニング加算があるので、それをしっかりこなしておける体制ができれば、そんなに困らないという所感ですね。

特に、「毎日のメニュー作り」にとても苦戦されていましたし、「大丈夫だと思うけどこんな家庭的な衛生管理でいいのか…?」という不安を抱えておられました。実際に、私が持っている知識の引き出しの中で、最も役に立ったのは給食管理の知識でしたね。

えぬこ
えぬこ

これは完全に余談ですが、年配の調理師さんや調理員さんをまとめた経験が、年配の介護士さんに助言するのに役立ったとも思っています。

さいごに

認知症グループホームでの栄養管理体制加算。私の中では令和3年の介護報酬改定で、最も専門職として求められている栄養関連の加算だなと思っています。

(強化加算レベルの栄養管理、前からある程度やっていたと思っているし、STや歯科衛生士いないのに経口維持とれちゃうなんて、もー管理栄養士の専門分野、ちょっと超えてない?なんて思っている…)

すべてのグループホームに管理栄養士が関われるようになれば、利用者へのサービス向上はもちろん、現場の介護職員の負担や不安も軽減できるはず。

とはいえ、グループホームの規模で管理栄養士を採用することは難しい。栄養ケアステーションに声をかけてみたり、パートで管理栄養士採用したりするのはハードルが高い…介護兼任の管理栄養士さんもなかなか見つからない…。

もし、グループホームと病院や老健、特養などを経営している方がこの記事を見ていたら、ぜひ、法人のグループホーム管理栄養士に声をかけてみてください。これはイチ管理栄養士の意見ですが、こんなにも求められ、やりがいがあり、絶対に管理栄養士が必要とされている職場の新規開拓、とってもやりがいがあります。きっと、アナタが声をかけた管理栄養士さんも、前向きに取り組んでくれると思いますよ。


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