ひとり配置であることが多く、なかなか先輩から学ぶ機会がない、特養や老健に勤務する管理栄養士。私もひとり勤務をしているため、書籍から学ぶことが多いです。私たちひとり配置の管理栄養士が、新しい知識を習得したり、ブランクがあって忘れてしまった知識を取り戻すためには、自分での勉強が欠かせません。
今回の記事では、施設管理栄養士におすすめの書籍を4つご紹介します。
建帛社 四訂 臨床栄養管理 (Nブックス)
1冊目は、臨床栄養についての書籍です。この本のおすすめポイントは「臨床栄養学」が書いているのではなく、「臨床における栄養管理」が書いてある点。
臨床栄養学の本は、臨床栄養の「学問的な知識」を書いている本です。が、この本は臨床栄養についての目標栄養量を「定量的に」書いています。体重あたりのエネルギーやたんぱく質をどのように設定すれば良いか等、「どの程度の目標栄養量を設定すれば良いか」が「数字で」書かれているため、実務で活用しやすいです。
なお、高齢者施設に入所される利用者様は、「急性期的な治療」をしにくるわけではありません。よって、病院のような専門的な栄養管理の知識はなくても大丈夫です。人生が長い分、色々な既往歴がある方が多いので、最初は深くより広くを優先して学びましょう。
なお、この本は管理栄養士養成校の授業でも採用されている書籍です。今の学生が学んでいる最新の臨床栄養の知識を網羅できれば、ほぼすべての利用者様の病態に対応した食事を提供できるでしょう。
写真は、私が学生時代に使用していた「第二版」であるため、「改訂」となっていますが、現在は4回目のリニューアルをした「四訂」が販売されています。必ず最新版を購入してくださいね。私も最新版をデスクに置いていて、良く調べ物をする時に使っています。一通り学習した後は辞書的な使い方ができますよ。
照林社 まるごと図解 摂食嚥下ケア
摂食嚥下障害が起こる疾患や認知症の種類、訓練や嚥下評価の方法について等、摂食嚥下についての知識がギュッと詰まった1冊です。
この本は全ページフルカラーで、写真やイラストがたくさん使用されているため、学んでいる内容についてのイメージがつかみやすいです。文章が羅列された本を読むことが苦手な人にもおすすめ。タイトルの通り摂食嚥下について「まるごと図解」されています。
摂食嚥下の機能については管理栄養士も勉強しますが、管理栄養士の養成校の教科書では深く掘り下げられていないことが多い「摂食嚥下機能の低下に影響を及ぼす病態」について学ぶことができます。具体的には、「認知症」「脳血管疾患」「高次機能障害」などです。
特に、老健や特養などの高齢者施設では、認知機能の低下のために食事摂取が進まないという症例をたくさん経験することになります。内閣府の発表によると、平成37(2025)年には65歳以上の認知症患者数が約700万人に増加するといわれていますので、高齢者施設で働く管理栄養士は、認知症への深い知識を身に付けておく必要がありますよ。
また、私が特に参考にしているのは、嚥下評価の方法です。私の勤務先には、ST(言語聴覚士)の配置がありません。食事観察でチェックすべきポイントやスクリーニングテストの方法についても詳しく記載があり、主にこの本を参考にしながら、看護師と共同して嚥下評価を行っています。
メディカ出版 消化・吸収・代謝と栄養素のすべてがわかるイラスト図鑑
この本は、タイトルの通り栄養素の「消化」「吸収」「代謝」について、フルカラーでイラストをたくさん使用して解説している本です。レベルとしては、管理栄養士国家試験の「基礎栄養学」と「人体の構造と機能及び疾病の成り立ち 」の部分で学習する内容よりも易しいと言えるでしょう。
なぜ、国家試験より易しい本をおすすめするかというと、非常によくまとめられているからです。人体の構造と機能や基礎栄養学の教科書は分厚く、国家試験で出題される範囲も広いですよね。それを、約180ページ、厚さにして1センチ程度の薄い本で、すぐに復習することができる非常に優秀な書籍だと思いました。
この本は、とてもに丁寧に栄養素の「消化」「吸収」「代謝」という管理栄養士が忘れてはいけない専門知識を1冊でまとめています。最近購入した本なのですが、1年に1回くらいは見直しをして、知識の復習をするために活用していきたいと思っています。
管理栄養士の国家試験で一度勉強した内容よりも易しいため、まったく知らない新しい知識との出会いはありません。が、社会に出て10年以上経つと、忘れてしまうこともたくさんあります。しかし、栄養素の代謝や消化吸収は管理栄養士の基本ですから、忘れてはいけませんよね。
栄養ケア・マネジメントのギモンQ&A45: 令和3年度介護報酬改定対応!
高齢者施設で欠かせない「栄養ケアマネジメント」について書かれている書籍です。栄養ケアマネジメントについて書いている書籍はたくさん流通していますが、この本のポイントは介護保険制度(介護報酬)について詳しく書かれている点です。
介護保険施設(特養や老健)では栄養ケアマネジメントを行うにあたり、栄養マネジメント加算や経口維持加算などを算定することになるのですが、算定のために抑えておかなければならないポイントが複数あります。いくら素晴らしい栄養管理を提供していても、加算返戻になるようなことがあってはならないのです。
この書籍では「栄養ケアマネジメントを行うために必要な知識」を「加算の仕組みを交えながら」詳しく解説をしています。
現状、私の知る限り「加算と深くからめた」栄養ケアマネジメントについての書籍はこの1冊だけです。連番になっていませんが、おそらくこちらの書籍の最新版。こっちを持っていたので、2022年4月に生まれ変わるこちらの本も早速購入した次第です。
なお、栄養マネジメント加算の算定については私も別の記事で解説しているので、よろしければそちらも参考にしてくださいね。
さいごに
今回の記事では、私がおすすめの書籍を4冊ご紹介しました。
どの本から得られる知識も、施設で管理栄養士をする上では、欠かすことができないものといえるでしょう。
専門書はどれも高額であるため、一度に4冊すべてを入手することが難しい場合もあると思います。その場合は、「実務に近い」ものから揃えてみることをおすすめします。
私もまだまだ勉強中です。みなさんも、おすすめの本があれば、ぜひ教えてください♡
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