みなさん、どうして病院には全粥・七分粥・五分粥・三分粥・などといろいろな種類のお粥があるか、ご存知でしょうか。
そして、それらの違いについて、詳しく知っていますか?
栄養士や管理栄養士さんの多くはもちろん知っていると思います。
でも、その意味を理解して栄養管理に活用できていますか。
先日、Twitterで交流させていただいているオカヒジキさんがこんなツイートを。あ!そういや、うち、分粥なくしたわ!と思い出し…
今回の記事では、私が分粥を必要ないと考えている根拠と、当施設で分粥を無くした話をしたいと思います。
私は「老健において分粥は必要ない」と考えています。
全粥・七分粥・五分粥・三分粥・重湯の定義
お粥を普通に炊くと、米粒は「限界までぱんぱんに水を吸った状態」になり、そして炊きあがった鍋には、「米粒が吸いきれなかった濁り汁」ができます。
この、限界までぱんぱんに水を吸った粒が全粥、米粒が吸いきれなかった濁り汁を重湯といいます。
病院や施設で提供される全粥は、この「全粥」の部分のみを提供したものです。
七分粥とは、この全粥7に対し重湯3を入れたものを指します。つまり、300gの七分粥とは、「全粥210gと重湯90g」を提供しているということです。五分粥であれば、その割合は5:5になり、三分粥であれば、全粥3に対し重湯7ということになります。
私の施設施設で起こった分粥紛争
ミールラウンドをしていると、時々こんなシーンに出会います。
そして、残飯には重湯がたくさん残っている。
病院や施設で管理栄養士をしている皆さん、一度は経験あるんじゃないでしょうか。
管理栄養士として、これはいただけません。
この患者さんたちは、おそらく「全粥を食べる力がある」そして問題なのは、「重湯の栄養や水分は体内に取り込まれていないが記録は10割摂取になっている」ということ。
これは、私も戦わなければと思い、声をあげました。
この患者さん、5分粥全量摂取じゃなくて、全粥1/2量摂取です!!分粥いらないです!
は?何言ってんの?消化機能悪い人には分粥は常識でしょう。
多くの病院では、術後の分粥として、おもゆや三分粥から食事が開始するものです。
つまり、胃腸が悪い=分粥で食事開始が常識。つまり、分粥とはおなかに優しい、そんなイメージが他職種、特に年配の他職種はこのイメージを持っています。
経験10年管理栄養士といえど、ベテラン他職種勢にとってはまだまだ若輩者。真っ正面からつっかかってはいけません。栄養科が何かを変えるときは会議で準備をして、数字で説明して、先生や上の人たちの了承をいただいて、現場に説明して…細かな対応しないといけないんだった。
不要なものを提供し続けることは無駄仕事。患者さんの利益にもならないのであれば、分粥なんて必要ありません。ということで、給食会議にて強く分粥の不要の主張を行い、無事、当施設から分粥というものは廃止されました。
お、おん分かった…。でも分粥なくすのもなあ…
個別対応で別付指示もらえたらやりますよ!
素敵な委託栄養士さんの配慮もあり、どうしても重湯が必要なときには、重湯別付オーダーをかけることができるようになっています。
…まあ、一度たりともそんなオーダーが来たことはありません。
真面目に分粥の必要性を考える
私は急性期病院で病院側職員として栄養管理をした経験はありませんが、多くの病院では消化管の術後食として「おもゆ」や「3分粥」のオーダーが入ります。委託の厨房時代によく経験しました。
先ほど図で説明した通り、この「3分粥」に意味はあるのでしょうか。3分粥の中身は、全粥とおもゆです。つまり、「少量の全粥」と「多量の水分」を消化吸収できる力が体にあれば、3分粥である必要はないのではないでしょうか。少量のお粥と、残りは水分の摂取でいいはず。
そもそも、委託で分粥を出していた患者者様には、さすがに揚げ物や鯖のような脂質の多い魚は出していませんでしたが、おかずは「基本的に煮物」さらに「麺の日はうどんを提供」していました。
このあたりの献立作成の状況は病院や施設によって異なりますが、分粥だけなぜか半分流動体のような形態で提供する必要があるのか。主食は分粥を提供していても、副食(おかず)はやわらかく炊いただけ、つまり全粥レベルの物性のものが提供されている病院も多いのではないかと思います。これまで私が栄養管理をする立場で関わった病院や施設、委託で厨房作業をさせていただいた施設、全てそうでした。
よって、私は重湯が多いだけの全粥、つまり分粥は必要性がないと判断しています。むしろ、離水する粥が嚥下障害の方に適さないといわれている昨今、分粥は危険なものになっているような気がしてなりません。
なんで奇数?全粥・七分粥・五分粥・三分粥
分粥が奇数である理由は、日本人は何かと奇数を好んできたからではないかと思います。例えば節句も、3月3日は桃の節句、5月5日は端午の節句、7月7日は七夕の節句、9月9日は重陽の節句というもの。日本人は奇数が好きなんだろうという考察をしています。
分粥に意味はないようなものなのだから、二粥でも四分粥でもいいんでしょうね。なじみがないだけのような気がします。
さいごに
今回、分粥について、Twitterでみたことをきっかけに、こんなエピソードを思い出して、ブログに書いてみました。
私は個人的に料理を科学することが管理栄養士の仕事だと思っています。リハ栄養とか詳しいPTも多いし栄養ケアにおける毎日の食事介助ってNsとか介護士とかがしてくれるし。
でも、「利用者様や患者様にお出しする食事」を「サイエンスとして理論立てて作る」って管理栄養士の専売特許だと思うんですね。誰にも冒されない私たちの専門性。
料理を科学する視点を常に持ちながら、美味しい満足感のある食事を出したいものです。ってあんまり分粥と関係ない締めになってしまいました。
Twitterでは文字数が足りない、分粥についてお話しましたけど、誰かのためになったら嬉しい限りです。
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