栄養ケアマネジメントQ&A!リスク判定?短期目標?長期目標?

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栄養ケアマネジメント

老健や特養の管理栄養士が行う栄養ケアマネジメント。これまで、当ブログでは栄養ケアマネジメントを栄養マネジメント加算算定のためにしなければならないことという観点で解説してきました。

今回の記事では、実際に栄養ケアマネジメントを行っているときに、これまで私が疑問に感じたこと、判断を迷ったことをお話します。

栄養ケアマネジメントで計算している栄養量(栄養補給量)は?

栄養ケア計画書には、「栄養補給・食事」について各項目があります。しかし、そこに記入する具体的な内容については決まっていません。

新人栄養士
新人栄養士

必要エネルギー量を書けばいいの?提供栄養量?エネルギーだけでいいの?

と疑問に思いますよね。これについては、特にこうしなければならないという規定決まりはありません。

必要栄養量はこう記入している

栄養ケアを行う際に考慮しなければならない栄養量の優先順位は次の通りです。

記入する栄養量の優先順位

①エネルギー量

②たんぱく質量

③脂質量

④その他の栄養素

私の栄養ケア計画書には、①必要エネルギー量と②たんぱく質量は全ての利用者様に対して記入しています。

エネルギー算出の方法については、こちらの記事も参考にしてくださいね。

その他、減塩食を提供している利用者様には塩分量、貧血食の利用者様には付加している鉄の量などを記入しています。

提供栄養量は食種とエネルギー量を記入している

提供栄養量は、実際に提供しているエネルギー量と、提供している食種を記入しています。

たくさんの個別対応をしている利用者様の場合は計算した結果を概算として記入していますが、給食には「食種」がありますから、それを記入しておけば問題ないでしょう。

栄養ケアマネジメントのリスク判定に例外は許されないのか

栄養士
栄養士

栄養ケアマネジメントのリスク判定をした時に、これはリスクが変わったわけじゃないよね?でも、マニュアル通りに判定すれば、リスクを変えなければならない……よね?

という事例を経験したことがあると思います。

そういった事例と私ならどう判断するかをお伝えします。

事例1

必要エネルギー量が1,200kcalで、体重変動もない。提供している普通食は1600kcal。もともと食事量にむらがあり、摂取量は7割から9割程度。再スクリーニングをしたら食事摂取量が75%であった。中リスクにするべき?

私は、このケースであれば、食事摂取量が低いという理由で中リスクにはしません。

判断している基準は3つあります。

1つ目は「普段の食事摂取量が7~9割で、再スクリーニングをした際の摂取量が75%であっただけだから。」2つ目は、「食事摂取量が75%でも必要エネルギー量を満たしているから。」3つ目は、「体重変動がないから」です。

事例2

利用者Aは、在宅で暴飲暴食をしてた経歴がある。入所後3カ月後の見直しでBMI30がBMI27となった。当然、体重減少率は3%以上ある。中リスクにすべき?

このケースも、私は中リスクにはしません。何故なら、もともと暴飲暴食をしていた利用者様が施設で規則正しく食事をしていれば、肥満解消に向かうのは当然であるためです。ただし、「摂取エネルギーが必要エネルギー量を満たしていない、アルブミン値が低い、褥瘡がある」などの項目に該当していないことは必ず確認しています。

事例3

褥瘡(Ⅰ度)が発生した利用者。発生原因は、車いすに長時間座っているからということが考えられる。認知機能の低下もあり、本人は日中寝ていることを拒否してしまう。日中は車いすで過ごしていただき、定期的に声をかけて寝ていただく時間を作っている。BMI18.8で食事摂取量も9割以上、入所後採血はしていないが、入所前のアルブミンは3.7g/dLで栄養的な課題があるため、発生した褥瘡ではなさそう。低リスクにしてもいい?

このケースは絶対に高リスクとして栄養管理を行わなければなりません。できれば、栄養状態が悪化していないか調べるために、医師に採血の指示をもらえないか提案しておきましょう。褥瘡があれば「高リスク」です。

栄養ケアマネジメントにおいてアルブミン値は必須か

栄養ケアマネジメントを行う際に、アルブミン値はあれば良いですが、必須ではありません。

スクリーニングにおいては、把握可能な項目(BMI、体重減少率、血清アルブミン値(検査値がわかる場合に記入)等)により、低栄養状態のリスクを把握することが介護保険の制度で定められているためです。

アルブミン値は栄養判定をする際の指標の1つでしかありません。アルブミン値のような「臨床検査」にあたる栄養指標を施設で把握していくことは難しいこともあります。

その場合は、制度には定められていない内容であっても「身体計測」でできる範囲の項目(上腕三頭筋部皮下脂肪厚(TSF)のような)を記録しておくとより充実した栄養ケアができるでしょう。

栄養ケアマネジメントにおいて採血は必須か

介護施設における栄養ケアマネジメントでは「採血はあれば良い」しかし「必須ではない」という位置づけです。

管理栄養士としては全員の採血データを定期的にとれれば、より充実した栄養ケアができると思いますが、「制度上必ず必要」とされているものではないため、施設には把握する義務を負わされていないのです。

採血をしたデータがほしいと思ったときは、医師に進言し、医師から指示が出れば採血をするという流れになるでしょう。

栄養ケアマネジメントの短期目標・長期目標とは?

栄養ケアマネジメントに限らず、介護保険のプランには「短期目標と長期目標」を設定しなければなりません。リハビリ担当者やケアマネが作成している計画書にも短期目標や長期目標は必ず記載されています。

私は、短期目標は3カ月以内(次の計画書見直し時期まで)でクリアしたい内容、長期目標は6カ月程度でクリアしたい目標を記入しています。

短期目標:食事と補助食品より必要エネルギー量を継続的に摂取できるようにする

長期目標:やせの改善(毎月1~2kgの体重増加)

なお、低リスクの利用者様の場合は長期目標も短期目標も「現状維持」にしています。

高リスク者の体重測定は2週間の1回なの?

低栄養高リスクの利用者様の場合、スクリーニングを2週間に1回します。それに合わせて体重測定ができれば理想的です。

しかし、現状、私の施設では、体重測定を看護・介護部が主体に行っているため「毎月測定」以上の体重測定は難しいです。

制度的にも「毎月体重を把握すれば良い」となっているため、2週間ごとのスクリーニングを行う場合でも2週間ごとの体重測定が必須というわけではありません。

ただし、2週間ごとに体重測定ができればより良いとは考えています。

栄養ケアマネジメントに記入する食事摂取量とは?

栄養ケアマネジメントでは主食の摂取状況と副食の摂取状況を記入します。

「主食●割、副食●割、全体●●%」と計算し、全体量が75%以下であれば中リスク判定とすることが原則です。

多職種による課題の解決の項目にとは何を書けばいいの?

私は全員の計画書に定型文を記入し、連携をしてより充実した栄養ケアを提供しないといけない利用者様に対しては、多職種の介入を依頼し、介入してもらった内容や議論した内容を記載しています。

全員に記載していること

・安全に食事を食べられるようにケアを行います 担当:看護・介護

・必要に応じて食事中の姿勢を評価します  担当:リハビリ

施設における栄養ケアは、食事をしっかり食べてもらう環境を作ることが基本です。よって、「1日3食しっかり食べられるようにケアをすることに対しては、365日介護士さんが関わっている」わけなので、それをそのまま書いておくことも立派な栄養ケア計画です。

栄養ケアマネジメントは「個人の栄養」でも食事は「集団給食?」療養食加算はどうなる?

栄養ケアマネジメントを行っていると「個別の栄養管理」が必要となってくるため、「集団給食の概念」からは少し外れた食事提供をすることになることも多いですよね。

そこで気になるのが療養食加算。

事例1

塩分6g未満の減塩食を心疾患の人に提供している。食事量が低下しているため補助食品をつけた。その結果、塩分が合計で6.0g/日を超える日が出てきてしまう。

事例2

糖尿病食1400kcal提供していて、体重減少が続いている。血糖値はFBS90程度。エネルギーをアップしても良いのではないか。でも施設の糖尿病食は1400kcalまでしかなくて、1600kcalは普通食になってしまう。

事例1や2は、療養食加算を算定してはいけないのか?

施設としては、療養食というサービスを提供していて、さらに補助食品の代金も負担しているのに、療養食加算を算定できなくなるの?おかしくない?ということがあったので自治体に問い合わせをしました。

まず、事例1に関しては、提供さている食事が補助食品込みで塩分6g/日以上になっていたら療養食加算は算定してはいけないと指導されました。しかし、今回は食思不振に対して補助食品をつけているため、副食を8割で提供し、補助食品を付加し、塩分の基準をクリアしているのであれば算定しても良いという回答をいただきました。

事例2に関しては、糖尿病に「何らかの配慮をしている」食事を出していれば算定しても良いという回答をいただきました。なので、私は炭水化物(糖質)が低い補助食品を付加し、加算を取り下げないこととしました。

この当たりは、自治体によって判断が異なる部分なので、青本を良く読み込んでから、自治体の管理栄養士さんに聞くと、アドバイスをもらえると思います。

最後に:判断に迷ったら自治体の管理栄養士に確認しよう

栄養ケアマネジメントをしていると、これはどう判断すれば良いのか迷うことがありますよね。ケアの内容に関する部分は、管理栄養士としての自分の答えを見つけ、試行錯誤していくしかありません。特に1人の現場であれば、質問できる先輩もいないため、困っている栄養士さんも多いのではないでしょうか。

制度的な部分で判断を迷ったときは、自治体の管理栄養士さんに相談しましょう。自治体の管理栄養士は、実地指導(監査)の際に施設に来て、指導をする仕事もしているため、この辺りの制度についても熟知しています。

コメント

  1. のり より:

    はじめまして‍♂️

    記事を拝見致しました!

    栄養ケアマネジメントで、体重減少3%以上だと中リスクと本などで見ますが、低リスクのまま行く場合はコメントなどに、理由を記載し低リスクとしていますか?

    • えぬこ Nさん より:

      コメントありがとうございます。

      そうですね。例えば、記事にも書いたような、BMI30以上のような肥満の方の場合、もともとのプランで体重減少を目標としていると思いますので、体重減少があっても、肥満の解消、目標達成ということで、理由を明記して低リスクにしています。

      もちろん、通常は、3%の体重減少があれば中リスクと判定します。例外的な判定をした場合は全て記載してますよ。

      また、逆のパターンでBMI18.3で中リスクの方がBMI18.6になったり18.4になったり……と1kg程度の体重変動でリスクがかわりそうなときは、逆にずっと中リスクにしているケースもあります。この場合も、理由は記録しています。

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