みなさんこんにちは。えぬこです。最近、プライベートが忙しく、更新ができておりませんでした。
今年7月ごろに下書きをしていた記事を、やっと公開できる状態にしたので、少し話題が古いんですが、日本食品標準成分表2020年版を業務でどのように使用するようになったかをお話ししたいと思います。
皆さんご存知の通り、2020年末、8訂食品成分表が発表されました。
これは、給食管理に携わる管理栄養士にとって、非常に大きなニュースです。
給食基準を決める管理栄養士はもちろん、給食会社で献立作成を担当している栄養士にとっても、業務に大きな影響が出るでしょう。
個人的には介護報酬改定なみに大きなニュースです。給食の現場がパニックになってもおかしくないような……。
で、これについて、学会が何かだしていたりしないかな?と思い、調べていると
日本栄養改善学会(http://jsnd.jp/)が
日本食品標準成分表の改訂に伴う実践栄養業務ならびに栄養学研究等に及ぼす影響と当面の対応に関する見解を出していました。
今回の記事では、この改定が業務にどのような影響を与えるのか、どう対応すればよいのか、学会がどのように発表しているのかを、「ざっくりと分かりやすいように」を目指して書きます。
8訂成分表の影響が大きな理由は、食品のエネルギー値が大きく変わるから
8訂の成分表では、エネルギー計算の方法が分かります。
日本栄養改善学会の見解によると、これまでの成分表を使った計算と、これからの計算では、8%程度の誤差がでるとのことです。
これまで、私たち管理栄養士は
と学習してきました。
が、8訂ではこうかわります。
え?ややこしすぎない???
詳しくは成分表本編をみていただければよいのですが、エネルギーの計算方法がこのように変更になりました。
パっとみて大きな影響が出そうなのは炭水化物ですね。
単純にこれまで4kcal/gとしていたものが、3.75kcal/gになっている(もちろん、ざっくりした解釈で、正式な定義ではない解釈ですが)ようなものです。
逆に、食物繊維には2kcal/gが与えられました。海藻類やきのこ類は、エネルギー量が上がりそうですね。
エネルギー計算の方法が変わるので、当然、給食のエネルギー量も変わってきます。
具体的にはどれくらい数字が変わってくるの?
さて、具体的には、どれくらい数値が変わってくるのでしょうか。
栄養計算ソフトを使っている施設では、ソフトの更新がかからないことには具体的な数字を計算することはできないでしょう。
この件について、栄養士会のホームページでは触れられていないし、病院や施設を管理している自治体からも、保健所の栄養士さんからも、通知は来ていません。いつから対応しないといけないのか?コロナウィルスの関係で実地指導は行われていない自治体が多い中でも、次の実地指導では見られるポイントになるのか?不明点が多いです。
色々探していると、日本栄養改善学会が出している資料を見つけました。それが、冒頭で紹介したこちらの資料です。
日本食品標準成分表の改訂に伴う実践栄養業務ならびに栄養学研究等に及ぼす影響と当面の対応に関する見解
これによると、「1日あたりのエネルギー値は7訂から8訂に変わることで、8%程度下がる」とされています。
平成 26 年国民健康・栄養調査に基づき 1 日当たりのエネルギー摂取量を七訂成分表と八訂成分表をそれぞれ用いて算出し比較したところ,八訂成分表による値は七訂成分表による値に比べ 8%程度減。
8%程度下がるということは、これまで(7訂成分表で)1800kcalだった給食が、同じ内容なのに1660kcalになってしまうということ。
もちろん、栄養補助食品は影響を受けないものが多く、それぞれの施設でどれくらいの誤差が出るのかは異なるため一概には言えません。
具体的にはどれくらい数字が変わってくるの?の答えは、「計算してみないと分からない」ですが、このような見解があることは知っておくと良いでしょう。
とれる対応は2種類が考えられる
こうなると、給食施設でとれる対応は大きく2つです。
「これまでと同じ給食を提供し、規約を変更する」か「規約通りの給食を提供し、給食の内容を変える」か。
それぞれの対応をとったときにメリットとデメリットなどを考えていきます。
これまでと同じ給食を提供し、8訂で計算した値に規約を変更する
これまでと同じ給食を提供し、規約を変更する方法であれば、規約を変えるという事務作業以外、大きな影響は受けません。
管理栄養士が規約を作り、医師などの承認を得るだけなので、給食の内容を変えるよりも変更点は少なくてすみます。
給食の内容が変わらないということは、そこにかかるコストは変わりません。直営であれば病院が払うコストは変わらない、委託であれば給食会社としても食材をたくさん使わなくても良いので、コスト面では有利です。
給食の内容が変わらないということは、量が増えないため、食思不振の人への負担もかかりにくいでしょう。
しかし、1800kcalだった規約を1660kcalに変えて給食管理をしやすくしても、喫食者に必要なエネルギーが、計算上は1660kcalになるわけではありません。必要エネルギー量1800kcalであるため、1800kcalの食事を提供していて、体重の変動がなく安定していた利用者。本当の必要エネルギー量は1日あたり1660kcalとなるのか。それもと、新しい基準の1800kcalで提供して様子をみるのか。専門職としてどう判断して対応していくのかが問われていますね。
先ほどの学会資料でも「これまで特定給食施設等で提供する食事の基準が高く見積もられていた可能性を示唆する」とされています。ここがどれくらいずれているのか、アカデミックな分野で働く管理栄養士たちに研究してもらいたいな。
これまでの規約通りの給食を提供し、給食の内容を変える
次に、規約通りの給食を提供し、給食の内容を変える方法。つまり、現状1600kcalの普通食を設定している施設であれば、8訂の数値で1600kcalを計算し、(8%の誤差があるとすれば)給食を7訂の1730kcal程度の給食に変える、ということです。
これから、栄養計算は8訂が主流になっていきます。今は変わったところなので混乱していて、先に話した方法のほうがスムーズに業務が行えるかもしれません。しかし、今後は8訂の1200kcalが1200kcalなのです。今は8訂の1200kcalは前の1300kcalくらいか、と思うかもしれませんが、そんな概念はなくなっていくことでしょう。
給食基準はそのままで、給食の内容を変えるほうが、考え方としては正しいように、個人的には思います。私は実務において、この方法でとりあえず調整してみました。
もちろん、これを行うのは大変です。直営給食であれば、すぐに食材費があがります。委託給食であれば、予算内で給食を作るために、質が低下するか、本部からの値上げ交渉があるかもしれません。量が増えると、高齢者施設では、食思不振の方を中心に、食べきれない可能性も考えられます。
コストかけないとしたら…マヨネーズ和えを多くしたり、脂質の多い部位の肉を使ったり、冷凍揚げ茄子をたくさん使ってみるといいのかしら…。
日本栄養改善学会も「専門職の責任において決すべきもの」としている
栄養計算ソフトを使用している施設では、栄養計算ソフトの会社が更新をしないことには、8訂で計算したくでもできません。そして、今回の食品成分表の改定、実は、積極的に急いで8訂を使わなくても良いとも考えられます。
根拠資料の中でも、「当面は移行期間と位置づけ,7訂成分表を用いる」ことを、「アリ」としていることが読み取れますね。(ほんと、ざっくりした言い方ですけど)
そして、今回の記事で資料としたものの結論でも、「専門職の責任において決すべきもの」としています。
つまり、私たち管理栄養士がどう解釈して、他職種や調理員にも分かりやすく業務を遂行していくのか。それにかかっているよということですね。
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