覚えておきたい行事食シリーズ、最後は10月から12月です。
前回までの記事は、こちら。
今回の記事では、10月から12月の行事食について、抑えておきたいポイントをお伝えします。
10月の行事食献立
10月の暦通りの行事食は次の通りです。
十五夜は9月に当たる年と10月にあたる年がありますので、9月の献立作成前に今年は何月何日かを確認してから献立作成をするようにしましょう。
10月の行事食:お月見・十五夜(団子・里芋)
お月見(十五夜)は、別名、”中秋の名月(ちゅうしゅうのめいげつ)”といいます。秋の真ん中に満月がでる日を指し、年によって日付にバラつきがあり、「9月7日から10月8日の間で、満月が出る日」のことです。
日本では、地域によって違いはありますが、お月見にはお供えをする文化があります。
月見団子は、丸い団子を月に見立て、感謝の気持ちを表わす、獲れたばかりの農作物は豊作の感謝などの意味があるそうです。団子は「十五夜」の名前の通り「15個」お供えをします。
給食では、里芋の煮物や豆腐白玉など、「丸い食材」を使った行事食を行うことが一般的です。
10月の行事食:十三夜(団子・栗・豆)
十三夜とは、旧暦(太陰暦)で毎月 13 日の夜を指します。旧暦といまの暦は少しずれますので、十三夜の行事食を行う際には日付の確認を必ず行うようにしましょう。
十五夜と同じように、月見団子や収穫物をお供えし、「十三夜」ですから団子の数は13個にします。
給食の現場では、十五夜と十三夜両方を行う施設は少ないのではないでしょうか。私も十五夜は献立に入れますが十三夜は入れていません。栄養士さんの考え方によってやる施設とやらない施設があると思います。
10月の行事食:ハロウィン(かぼちゃ)10月31日
10月31日はハロウィンです。若い世代は非常に盛り上がる行事ですが、高齢者の方の中にはなじみがない方も多いため、力を入れている施設と入れていない施設の差が大きいと思います。
ハロウィンは古代ケルト人が行っていた祭が、アメリカ合衆国にて「ジャックオランタン」を飾ったり子供たちが仮装をしたりする祭に姿を変え、日本では若者たちが仮装をする行事へと姿を変えていきました。
ハロウィンの行事食としては、ジャックオランタンを飾っていたことからかぼちゃを使った料理をすることが一般的です。かぼちゃサラダやマッシュかぼちゃをジャックオランタンの形に作ったり、かぼちゃグラタンを提供したり、おやつにかぼちゃケーキを提供してデコレーションしたりと色々な工夫ができますね。
ハロウィンは高齢者にはあまり浸透していないため、行事食カードを付けて「今日はハロウィンですよ」というお知らせができるとより良いと思います。
10月のその他祝日など
10月のその他祝日は次の通りです。
スポーツの日は東京オリンピックの関係で、2020年2021年は7月に移動していますが、オリンピックが終わったら10月に戻ります。名称も体育の日からスポーツの日に名前が変わっています。
私は2020年のスポーツの日に体育の日の名称が変更になったこと、日程が変更になっていることが分かるようなコメントを入れたカードを作成して昼食時に配布しました。特に「行事食」は実施していませんが……。
11月の行事食献立
11月の暦通りの行事食はありません。
強いて言えば、15日の七五三に千歳飴を食べるという習慣がありますが、給食で行事食として提供することは難しいのではないでしょうか。
特に高齢者施設の場合、誤嚥防止のために飴を提供してはいけないとしている施設も多いですよね。
11月の祝日など
11月の行事食とあまり関係がない祝日は次の通りです。
11月は食事と関係の深い祝日はありませんが、3回祝日があります。
12月のような行事がたくさんある月に向けて予算を蓄えておく月にしても良し、また、お赤飯やちらし寿司、茶碗蒸し等の定番の豪華メニューや、七五三と子供をイメージしたお子様ランチ風プレート等、色々な工夫をするも良しの月といえるでしょう。
12月の行事献立
12月の行事食は次の通りです。
12月は行事食がたくさんありますね。年始のおせち、七草粥、鏡開きまで行事食が多いシーズンです。
12月の行事食:冬至(かぼちゃ・ゆず)
冬至は、「1年で最も昼が短く夜が長い日」です。天文学的には太陽が1番南にある状態であり、北半球ではどこも「1年で最も昼が短く夜が長い日」になります。
冬至の日付は、固定されているものではないので、変動することがありますが、だいたい12月の21日頃。献立作成の前に、カレンダーをよく確認しておきましょう。
冬至といえば、かぼちゃ・あずき・ゆず。
かぼちゃは、その保存性や豊富な栄養から「かぼちゃを食べて厳しい冬を乗り越えよう」ということで、昔から冬至に食べてきたといわれています。
小豆は、中国に医学書に「鬼毒を殺し、痛みをとめる」と記載があるほど、厄払いに用いられてきた食べ物です。中国で冬至に小豆粥を食べていた文化が、日本にもはいってきたといわれています。
ゆずは、本来「当時にお風呂に入れる」という使い方をしてきましたが、給食では行事食として柚子を使い、季節を感じてもらう工夫をしている栄養士さんが多いと思います。
「冬至=湯治(とうじ)」「柚子=融通(ゆうずう)」というごろ合わせから、融通がききますように、柚子の強い香りで邪気が払えますように、という願いを込めて柚子風呂に入るようになったといわれています。
12月の行事食:クリスマス(洋食や鶏肉)
クリスマスは、12月25日で、イエスキリストの誕生祭として、多くの日本人にも染みついているイベントです。給食の現場でも、12月24日、25日と行事食をする施設が多いのではないでしょうか。
給食施設では、鶏肉を使った料理を行事食として提供することが多いと思います。アメリカではお祝いの料理として七面鳥を食べる習慣がありますが、日本ではあまり七面鳥を食べないため、良く似た「チキン(鶏肉」を食べるようになったといわれています。
クリスマスの食事は各国で特色があり、イギリスであればミンスパイ(ドライフルーツやナッツを入れたパイ)やドイツのシュトーレン、イタリアのパネトーネやフランスのブッシュドノエルなどがあります。
給食では、鶏肉を使ったお料理や、食材そのものはクリスマスと関連していなくても、豪華な洋食にしたり、華やかなケーキを作ったりと、工夫しがいがある行事です。
手作りで工夫するもよし。最近は美味しくて華やかな冷凍食材(特にケーキ)を使うもよし。商品知識と技術をフル動員して、喫食者さんに素敵なクリスマスをお届けできるといいですね。
12月の行事食:大晦日(年越しそば)
12月31日、日本では縁起が良いとして蕎麦を食べながら年越しをする習慣があります。
由来は諸説ありますが、
・そばは細くて長いため長生きできるように
・そばは切れやすいため、一年の苦労や厄介事を断ち切って新年を迎えよう
等といわれています。
給食では、鶏南蛮そばや、かき揚げ蕎麦などを提供することが多いと思います。高齢者施設ではできる限り「生活に近い」食事提供を求められるので、夕食に蕎麦を提供する施設も多いでしょう。
年越しそばを夕食に提供するのって大変ですよね。いつもはお昼のメンバーで提供する麺類。麺類の日は厨房の作業同線が変更になりますから、夕食のメンバーで提供するのは、今年最後の大仕事。
12月のその他祝日など
12月23日は平成天皇の誕生日なので、平成時代には祝日でしたが、令和天皇が即位されてから天皇誕生日が2月23日となったため、平日になりました。
そのため、12月の祝日はありません。
さいごに
栄養士が「献立作成時に覚えておきたい行事食」を4回に分けて書いてきました。
栄養士や管理栄養士が献立作成をする際には、暦通りの行事食を知っておかないと、思わぬところでクレームを出してしまったり、楽しみにしていた誰かを悲しませてしまったりすることも。
時代の変化とともに、昔のように家庭で行事食に触れる機会が少なくなっているので、「学校で習わないことは知らない」栄養士さんも増えているでしょう。私もそうでした。
献立作成をする際にこんな記事があったな、と思い出して活用してもらえると嬉しいです。
行事食は様々な由来があるので、調べてみると結構面白いですよ。
安心安全な給食を時間通りに提供することが私たちの最重要業務ですが、医療や介護の一部でありつつ、フードサービスを意識して仕事をしていける栄養士さんが増えたらいいなと思い、自分の知識をまとめてみました。
特に、コロナウイルスの流行している昨今、長期間入所する高齢者施設では、楽しみである家族の面会や、季節を感じられる外出(お散歩や花見)が禁止になっていることがほとんどだと思います。
そういったもやもやを抱えている人が少なくない昨今、美味しく季節を感じられるお食事を食べてもらうことで、少しでも明るい気持ちを提供できればいいなと思います。
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