私が今から書くことは、勤務して1~2年くらいの間までに、自分の施設で解決してきたもやもやを元に、看護師さんや介護士さんにお願いしたことです。もやっとするたびに「看護師さんお願い~介護士さん頼むよ~」と思ってきた、ちょっとしたお願いたちを発信してみました。
もし、あなたの職場で悩んでいそうな管理栄養士さんがいたら、管理栄養士さんと意見が合わなかったら、イラっとしたとき、「あ、あの人にもあんな言い分があるのかもしれない」と一拍おいてもらえると、少し嬉しいなと思うことをまとめてみました。
利用者様の細かいご様子を教えてほしい
管理栄養士は100床であっても、厨房に業者が入っていれば、ひとりしか配置されていないことが多々あります。私たち管理栄養士は、看護師さんや介護士さんと比べると「直接的で緊急性の高い仕事」は少ないです。
その分といってはなんですが、100名の栄養管理をたったひとりでうけおっています。お昼には利用者様のもとへ足を運びますが、優先順位はどうしても「食べられない人」「低栄養のリスクが高い人」です。
介護保険の制度上、低栄養のリスクが低いとはいえ、3か月に1度は全員の食事のご様子をみる義務がありますので、(栄養ケアマネジメントの制度の都合)ちゃんと食べてる利用者さんのことを放置しているわけではありませんが、「普通に食べていて痩せてなくて、褥瘡もないよね」というような人のご様子まで、なかなか手が回りません。
休憩室で会ったとき、ステーションでたまたま顔を合わせたとき、「あ、そういえばあの人こんなこと言ってたな」という情報があれば、気軽に声をかけてもらえると、嬉しいです。
食事について気になったことはなんでも伝えてほしい
管理栄養士は食事管理、給食管理の責任者です。が、厨房のすべてを把握することは困難です。例えば、洗浄作業や盛り付けなどは、全部パートさんが行っています。そうすると、どんなふうに下膳されているか、まではなかなか目が行き届かないことも。
今日のお茶、いつもよりちょっとぬるかったよ。そういえば、最近ちょっと食器が古くなってきていないかな。ほんとはあと5個くらいたくさんコップを配膳してほしいなあ…
食事周辺のことについて気になったことは、声をかけてもらえると嬉しいです。「知っていたら対応しないと!」と判断できることに、「見てないから気づけないこと、知っていたら対応できること」もあります。
食事やお茶、おやつについて、気になったことがあれば、利用者様のことじゃなくても、教えてもらえると助かります。
食事オーダーの締め切りが守れなかったときは、理由を話してほしい
食事オーダーの締め切り時間に間に合わないとき。看護師さんのせいではないのに、なぜか厨房に謝りながら電話をした経験はありませんか?
管理栄養士は18時までいるはずなのに、17時ごろに電話をして食事をオーダーしたら、文句を言われた。
緊急でショートステイを受けたのに。先生の指示が締め切りに間に合わなかったのに、管理栄養士には到底できないような、生死にかかわる急変対応をしていたから連絡が遅れたんですけど。なんなの!
って、経験された方は多いと思います。
食事オーダーの時間締め切りには理由があって、その時間が守られなければ、私たち厨房や管理栄養士は残業が発生したり、厨房との業務委託契約の中で、取引先とに「規約違反」になってしまったり、事業所によって、その事情は異なると思いますが、締め切りが守られないことによって、困ることがあるのです。
もし締め切りが守れなかったときは、一言「急変対応で連絡が遅れました」とだけあれば、謝罪なんてされなくても、管理栄養士も気持ちよくオーダーを受けられるし、管理栄養士からオーダーを受ける厨房さんも「それは仕方がないね、協力しなければ」と思います。その一言を言っても対応が悪い管理栄養士は施設の職員として論外な素行の悪さだと思いますが、「理由を話す」だけで部署間のコミュニケーションがよくなっていくと思うので、ぜひお願いしたいです。
事務所に座っている時間は暇ではない
これは、介護士さんや看護師さんからも、経営サイドからも調理員さんからもいわれることですが、管理栄養士が机に座っている時間は暇な時間ではありません。
給食管理における帳票は、膨大な量があります。
介護施設であれば、ここの栄養ケア計画書、栄養スクリーニング書、経口維持計画、食事観察記録などがあります。
管理栄養士は、他職種に目にすることがある書類以外に、自分たち管理栄養士と実地指導の担当者しか見ないような書類を、法令に基づいて処理しています。
これらの処理だけでも、毎日1時間程度は、事務時間を確保したいところです。
当施設では、1年間に書類保管用段ボールが4つパンパンになる程度の書類を、毎年作成しています。
「管理栄養士さんは、調理もしない、食事介助もしない、カルテ記入もしていない時間、何してるの??」って思われがちですが、書類作成だけでも、実は仕事が山盛りなのです。
これが「管理栄養士ってなにしてんだろ?」と、思われる理由のひとつかもしれませんが、管理栄養士がこれらの処理をしなければ、実地指導で指導されてしまうのです…。
下膳車はゴミ箱ではない
むかし、こんなやり取りがありました。
栄養士さーん!こんなの降りてきました
どれどれ…あ、義歯ね。あら、もうこれ薬袋じゃないの。
今日はティッシュも山盛りでしたよ~もう!あ、ほらまた、歯ブラシ
(内線かけて)Bフロアから青い歯ブラシがおりてきたんですけど~
あ、それもう捨てるから下げました。どうみても古いですよね、捨てといていいですよ。
今は、取り決めをいろいろして、ゴミが下膳されない職場になりましたが、取り決め前はティッシュやおしぼり、タオルやエプロンなどが大量に降りてきて、このエピソードのように「それごみなんで」と言われたことも。おそらく、悩んでおられる栄養士さんや厨房職員も多いと思います。
厨房へ帰る「下膳車」はゴミ箱ではありません。もちろん、ジャムを開封したゴミや、補助食品のパックなどは、責任もって処理します。でも、厨房から出たごみ以外のものは、フロアで処理していただきたい。
ましてや、義歯を残飯と一緒に処理してしまったら、組織として、患者様や利用者様に謝罪もしないといけない事故にも発展しかねません。
検食は職員のごはんではない
ねえ栄養士さん。検食簿読んでる?この前、きゅうりがふにゃふにゃって書いたんだけど、今日また食べ応えがないわ!
栄養士さんが検食した日の評価、やたら高いですよね。「優」つけるほど美味しいですかねうちの食事。
これらは、実際に私がいわれたことです。
給食はフードサービスという側面もありますから、もちろん、美味しいお食事を目指しています。が、「安全で」「栄養価があっていて」「2時間で作ることができる」という、美味しいと同じくらい、いや、それ以上にこれらを大事にしている食事が給食です。
検食は職員にとって美味しい食事ではありません。今でもまに「ゆで過ぎ」とか書かれますが、「高齢者が食べやすい食事」への配慮まで、健康な大人目線で批判されると、少しつらいものがあります。
「食事相談」のオーダーを出してほしい
「利用者様から食事についての意見」を言われたときは、遠慮なく管理栄養士を呼んでください。ピッチや内線にかけてください。私たちが責任をもって食事についての相談を受け付けます。
管理栄養士は、常に利用者様の近くにいる職種ではありませんが、食事相談は私たちの専門分野です。給食の個別対応では対応できる範囲に限りがありますが、もしかしたら「工夫すれば対応できる」かもしれません。
厨房・給食と現場をつなぐ仕事は、ぜひ私たちに任せてください。
心の中で「ああ!なんかAさんがまた食事についての文句を言ってる!今からお風呂介助なのに、インシデント書かないといけないのに、え?Bさんトイレ行きたい?忙しいのにー!!!!」って思ったとき、管理栄養士を呼び出してもらったらと思います。
相手を理解して自分を理解してもらえるための行動をとって職場を平和にしたい…
もし、ほかの職種の方が、ここまでこの文章を読んでくださったのなら、ありがとうございますと伝えたいです。読んでいて気分のいいものではない内容もあったと思います。
私の職場では、検食は「利用者さんに適しているか」という評価をしてもらえるようになってきたし、下膳車にゴミが乗っていることも、ほとんどありません。利用者様の誰かが食事についての意見を話したら、すぐに私のピッチが鳴ります。事務所で仕事をしているとき、事務所の窓口や電話当番も、事務員さんが対応してくれるようになりました。今ではほとんどしてません。
管理栄養士も、相手に求めるだけでなく、ちゃんと自分の抱えている仕事や、その必要性を相手に伝えていなければなりません。それができなければ、「総スカン」を食らうのも仕方がないなと思っています。
でも、少しだけ、こんなことをやっているんだよ、ということを伝えられたらなと思い、発信させてもらいました。
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