特養や老健にはひとり配置であることが多い私たち管理栄養士。なかなか、ほかの人がどのようなスケジュールで働いているか、情報交換をすることも少ないですよね。
今回の記事では、私が行っている業務のルーティンを紹介します。
厨房が委託されている施設管理栄養士の1日の流れです。まだ仕事になれていない、自分でルーティンを作れていない人は、ぜひ参考にしてくださいね。
老健管理栄養士のタイムスケジュール
私が行っている業務の1日の流れは、次の通りです。
9:00 出勤・申し送り
出勤したら、1日の始まりはパソコンの立ち上げから。
私はTODOリストを作成してサクサク仕事を処理していくタイプなので、自分で作成したTODOリストの確認とメールチェックを行います。
9:00からは朝礼と申し送りがありますので、申し送りに参加します。
ひとりで常にすべての利用者の食事状況を見ることはできないので、介護看護からの情報収集は非常に重要。
申し送りでは主に以下のことを確認したり、依頼されたりします。
感染症が発生していないか(インフル・ノロ疑い)
転倒転落、熱発者の有無
外泊や外出者がいないか
看護師や介護士がみていて食事変更をしたい人の情報の受け取り
昼食時にラウンドをしてほしい人の依頼を受ける
食事相談の依頼(利用者が食事について言いたいことがあるとき)
前日夕食の摂取量が低い人の情報の受け取り
申し送りでは9割がた栄養には関係ないやりとりをしていますが、利用者様の体調の情報や施設全体のその日1日の流れが分かるので、必ず出席しています。
9:30 食事変更・食数表作成・食事箋管理
申し送りが終わったら、申し送りをふまえた食事変更の指示を厨房に出します。
うちの厨房は委託ですが、食札と食数管理は私が行っているので、食数ボードの書き換えを行います。この作業は結構めんどくさく、厨房の栄養士にやってもらいたいという願望もあるのですが、調理員さんとのコミュニケーションがとれる時間でもあるので、自分でボードの書き換えを行っています。
次に、前日に発行されている食事箋が前日にあった入退所、変更や外出と一致しているかを確認します。
うちの施設では、口頭指示で現場が動き、その日のうちに看護師が食事箋を記入、医師のハンコをもらい、食事箋の発行となります。看護師の事務作業が多いと当日に食事箋が私の手元に来ないので、まとめて翌日チェックにしたほうが効率が良いためです。
食事変更の事務作業は地味に煩雑で、確認する書類も多いです。ベテラン栄養士さんの多くはサラリとこなしていますが、実際には、1件の食事変更に対して、下記の書類を更新しています。
①食事箋
②厨房への指示書
③食数表
④食札
⑤栄養ケアマネジメント経過記録
これらの処理をしていると、時間は意外とあっという間です。
10:00 入所カンファレンス
当施設では1週間に3名前後、新しい利用者様の入所があります。だいたい午前中入所が多いので、午前の事務作業が終わったら入所カンファレンスに出席します。
主な出席メンバーは、利用者様とそのご家族、ケアマネ、ナース、リハビリ担当者、介護職員、管理栄養士です。
入所時のカンファレンスでは栄養ケア計画の説明を行います。
その他、利用者様にアレルギーはないか、嗜好で食べられないものはないか、事前情報で準備している食事を提供することに対する同意をもらうこと等は必ずしています。
管理栄養士はひとりなので、毎回参加する負担は大きいですが、リハビリさんの話で自助食器の話が出たり、看護師の話で排便コントロールの話が出たりするので、結構有意義なカンファレンスですよ!
11:00 検食・書類整理・カルテ確認
11:00頃、昼食の検食を行います。(厨房は委託)
滅多なことでは修正はかけませんが、たまにこれは…という間違いがあり、検食後に修正を依頼することもあります。
検食が終わったら、簡単な事務作業とカルテの確認を行います。
私はデスクが事務所にあるので、事務所で作成してカルテに保管しなければならない書類の整理をしたり、その日にミールラウンドを行う人のカルテをチェックしたりします。
12:00 ミールラウンド・休憩
昼食時にはミールラウンドを行います。
低栄養リスク改善加算を算定している(管理栄養士による週5回の食事観察が算定要件)施設なので、加算を算定している方の食事状況は必ず見に行っています。
次に、その日の午後から栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング書を作ろうと思っている利用者様の食事状況も見に行きます。
あれ?休憩いつとった?そうそう、12:00台に休憩とれたらとるけど、まあ無理だわな(笑)
事務作業中にコーヒー飲んだり、検食したときにボーっとしたりして、自分の中で調整しています…。さすがに昼ごはん食べられないときは、13:00過ぎてから食べています。
ミールラウンドでのチェック項目
ミールラウンドでチェックしている項目はおおよそ以下の通りです。
・食べる意欲はあるか、集中して食べられているか
・食事の途中で疲れてしまわないか
・動作に課題はあるか(うまくすくえない、口に入れる前にこぼしていないか)
・うまく呑み込めているか、口の中に入れたまま止まっていないか
・むせていないか
動作に課題がある場合は、自分で自助食器やスプーンを用意して評価してみますが、それでも上手くいなかいときは担当OTやPTに専門的な評価を依頼したり、嚥下に問題がありそうな方はSTに評価を依頼したりしています。(STさんは非常勤で常駐しておられないので…)
13:00 食事変更・会議・カンファレンス・事務作業など
午後から一番最初に行うことは、夕食以降に食事変更があれば、それを厨房に依頼します。午前中に行った食事変更と同じです。
その他、会議やカンファレンスに出席したり、事務仕事をしたり、午後からの時間の使い方はその日によって異なります。
会議については、別の記事に詳しくまとめています。
運営に関する会議
介護老人保健施設では、運営のために以下の会議を行います。施設によって名前は異なると思いますが…
・褥瘡対策会議
・感染対策会議
・インシデントおよびアクシデント検討会議
・接遇向上会議
・倫理(身体拘束についての検討)会議
・給食会議(栄養管理会議)
これらの会議には、施設長や看護部長、現場の看護師や介護士、リハビリ、ケアマネ、管理栄養士などが出席します。
管理栄養士は役職者じゃなくても、配置人数が一人だから、全部出席しないといけないんですよね。
利用者に対する会議
運営に関する会議以外に、利用者に関する会議(カンファレンス)もあります。
・サービス担当者会議
・退所前カンファレンス
・入所継続判定会議
サービス担当者会議は、ケアマネが主体となって開催される会議で、家族様・ケアマネ・利用者様のケアに関わる職種が出席します。利用者様の今の状態を家族様に報告し、今後のケアの方向性について話し合って家族様の同意を得たり、家族様が考えている利用者様の今後(在宅復帰は可能か?今後、次の施設を探すのか?など)についての聞き取りを行ったりします。
退所前カンファレンスは、利用者様が在宅へ帰る際に、家族様と在宅生活を支えるスタッフ(ケアマネ・デイ職員・ヘルパーなど)と施設でケアに携わったスタッフが利用者様の情報交換を行うための会議です。そこで、施設では対応できることも家ではできない、ということもあるので、そういったことを解決するための会議でもあります。
やり取りの例は以下の通り…!
クリミールを購入するには経済的負担が大きいので、エンシュアに変えられませんか?
施設でも可能な限り美味しいものや嗜好に合わせていますが、食事が合わないのかもしれません。補助食品ありきではなく、ご自宅では好きなものを食べていただいて、それでも摂取量が足りなければ在宅の主治医に相談してみてはどうですか?
自宅で毎回お粥なんて炊いてられないんですけど…
嗜好の問題でお粥を出しているだけなので、しばらく米飯を提供させていただいて、施設でのご様子を報告させていただきますね。
塩分制限をされているようですが、デイではどう対応したらいいですか?
そちらに栄養士さんがおられたら、栄養士さんに相談してみてください。当施設では汁物半分で対応していました。元の献立の塩分が高い日は減塩醤油を使っています。でも、お昼1食だけの塩分量を考えるだけでは不十分なので、ご自宅で食べている食事の量を見ながら、トータルの塩分量で考える必要があります。主治医の先生がいる病院で外来の栄養指導を受けてみるか、訪問の栄養指導に対応できる施設は●●とかがあるので、ケアマネさんと相談して地域の栄養士さんに相談してみてくださいね。(施設の外のケアには責任もてないのでこうなってしまう…)
食事の話がでることはあまり多くないのですが、このような質問に答えるような会議です。
事務作業
管理栄養士業務を行うにあたり、作らなければならない書類がたくさんありますので、事務作業も落ち着いた午後に時間に行っています。
・栄養ケア計画、栄養スクリーニング・アセスメント・モニタリング
・厨房関係書類チェック(来月の献立・月末で締めた衛生関係書類)
・委員会でやらないといけない仕事(栄養士だからというより感染対策や褥瘡対策の書類関係の処理)
・窓口と電話対応(事務員さんで対応しきれないときだけ)
・会議準備
・行事食カード作成
・栄養補助食品の発注
・施設で作成しなければならない給食関係帳票作成(年齢構成表や委託さんに渡す所在名簿、災害時備蓄や加重平均算出など定期的にやる仕事があります)
会議やカンファレンスがなければ、比較的落ち着いて作業をすることができます。
15:00 おやつラウンド
老健ではおやつを提供していますので、おやつのラウンドを行います。
提供しているおやつは、普通形態のおやつとゼリー剤形態のおやつの2種類なので、刻み食を食べている方に普通形態を提供しても安全かの確認をしたり、おやつの評判を聞いたり、昼のラウンドでは十分に話をする時間がとれない利用者様とコミュニケーションをとったりしています。
とくに「米飯・軟菜・低リスク」の方の場合、ミールランド時にじっくりお話を聞くことが難しいこともあるので、おやつの時間のコミュニケーションをとらせてもらっています。
「食事観察」じゃなくて「コミュニケーション」という面が強い対応は、おやつ時にしています。対応しなければならない範囲の嗜好と、いや、それは…という対応と、線引きが難しいですよね。後者のような要望がある利用者様はお話を聞いてほしい!という方もおられるので、可能な限りおやつ時に対応しています。
退勤時間まで残務処理
おやつラウンドが終わったら、退勤までは残務処理をします。夕食の検食もします。
おやつの配膳が終わった後は、委託側の栄養士さんも少し時間の余裕ができるようなので、委託さんと話し合いたいことがある場合は、夕方の時間帯にすることが多いです。
17:15 退勤、翌日のTODOリスト作成
私の退勤時間は17:15なので、時間が来たら帰ります。
(45分休憩で7時間30分労働なので、ちょっと特殊)
私はTODOリストがないと動けない性質の人間なので、翌日にやることリストも作成しています。
最後に
100床程度の老健で勤務するひとり管理栄養士の業務内容をまとめました。
給食会社が入っている施設の管理栄養士は、厨房で走り回るような体力勝負な仕事は少なく、書類作成や利用者様とのコミュニケーション、施設運営に関することや、他職種や家族様、外部との調整を行うことが多いです。
体力はあまり必要ないですが、管理栄養士の人数は少ないので、自分と違う専門性をもった人たちとかかわっていく中で管理栄養士としての主張もしていく、そして円滑に業務を回すコミュニケーション力が必要なポジションです。
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