給食会社はブラック企業だ。就職先にはすすめないよ
これ、もう何年も言われていますね。
委託がブラックだといわれる「理由」は山ほどあります。でも、「原因」は「栄養士の勉強不足」または「会社が違法なことをしている」の2つしかないことに気づきました。
今回の記事は委託に就職して後悔している若手栄養士や、これから委託に就職しようと思っている栄養学生に向けて給食会社がブラックだといわれる原因についてお話しします。
「委託はブラックだから辞めたい(辞めておきたい)」と思う理由が原因①に該当するなら、そもそも給食会社で働いてはいけません。原因②に該当するなら、同業でもいいので転職しましょう。
原因①働く管理栄養士側が業界を理解していないための言いがかり
委託給食会社がブラックだといわれる原因の1つ目は、働く栄養士側が業界を理解していないため「言いがかりをつけている」というケースです。
Googleで検索すると委託栄養士はブラックだという理由が山ほど出てきますが、業界の構造上当たり前であることに対して愚痴を言っているだけという記事も少なくありません。
私も色々な理由をつけて、委託をブラックだと言ったことがあります。でも、私が業界を理解していなかっただけでブラックだと騒ぎすぎた部分もありました。
次のような理由で委託給食をブラックだと思っているなら、それは栄養士側の言いがかりでしかないかもしれませんよ。「ブラックだと感じる企業」と「ブラック企業」は違います。
委託給食会社は管理栄養士としての将来性がないからブラックだ→当たり前
給食会社に管理栄養士の仕事はありません。給食会社は、病院や介護施設から給食業務を「受託」する会社です。栄養指導、栄養ケアマネジメント、献立基準の作成などの仕事をする権限は給食会社にはない上に、受託している業務の最終責任も「クライアント側」にあります。
よって、給食会社で働く管理栄養士が「この会社にいても管理栄養士としての将来性がない」と感じるのは当然です。
給食会社側も栄養士や栄養学生さんを確保したいので、求人票を上手に書いて「管理栄養士の仕事」ができるように読ませてきます。でも、給食会社に必要な人材は、調理師と栄養士、調理補助のパートさんだけで、管理栄養士は必要ありません。栄養士さえ不要な現場もあります。
求人票を見ても、管理栄養士が必須となっていない、栄養士でも就職できるのはそういった理由です。
もし、アナタの管理栄養士免許や習得した知識を「管理栄養士手当以外の部分」で活かしたいのであれば、「管理栄養士を必要としている職場」で活かしてください。
もちろん、アナタが給食管理のスペシャリストになりたいと考えていたり、複数の現場のマネジメントをしたいと考えていたりするなら、給食会社でキャリアアップすると良いでしょう。もちろん、それは価値の高い仕事です。
でもそれは「管理栄養士としてのキャリア」ではありません。給食会社社員としてのキャリアです。
委託給食会社は労働環境がブラックだ→言いがかりの可能性もあります
委託給食会社の労働環境はハードです。
委託の労働環境がハードがといわれる部分といえば…
・夏は暑く冬は寒い
・朝は5時から、夜は20時まで
・異動が多く環境が変わりやすい
・一日中立ちっぱなしでしんどい
このあたりが定番ですかね。
もちろん、このような仕事は体力的にハードです。でも、もしこれが理由で委託給食会社をブラックだと思っているなら、それは言いがかりかもしれません。
365日3食の食事を出す仕事なら、早出遅出は当然ありますし、調理を仕事にするなら立ちっぱなしの作業も当然です。火を使う仕事なので厨房は暑い(温度記録は必要ですが)のは当たり前で、冬でも水を扱うため寒さに耐えるのも当たり前です。給食会社に限った話ではなく、直営給食の現場も同じようにハードです。なので、委託給食会社がブラックな理由にはなりません。
体力勝負で生活リズムが狂いやすい業界であるため、プライベートが楽しめないということは多々あるでしょう。でも、違法なことをしているわけではありませんので、これらを理由にブラック企業だと言うのは間違いです。
ただし、従業員に健康診断を受けさせない、厨房に冷暖房設備がないのにクライアントにかけあわない、妊娠しているのに環境に配慮しない、などの項目に該当すれば、ブラック企業です。
委託給食会社は給料が安いからブラックだ→給料には入社前に納得しておこう
栄養士・管理栄養士は給料が安い専門職です。年収は300万円程度からのスタートで、ベテランでも400万円程度が相場になりがち。
給料会社であれば、月給18.5万円から20万円スタートの職場が多いです。手取りにして15万円程度ということも少なくありません。
別の記事管理栄養士の給料は低い?でもしょーがなくない?でも解説した通りです。
残業代が支払われていないのであれば、ブラック企業といえますが、給料が安いからブラック企業だと言ってしまうのは、栄養士側が求人票を確認していないのが悪いとも言えます。
就職するときは月給と手取りがどれくらいになるのかは十分確認しておきましょう。
委託給食会社はボーナスがない→ボーナスは支払い義務のない報酬
ボーナスは業績評価で支給されるものなので、安定してもらえる報酬ではありません。会社側が「今年は利益がないからボーナスは払いません」と判断すれば、企業側に支給する義務はないのです。
日本企業の多くは正社員に賞与を支払いますが、賞与を支払う義務は会社側にはありません。年俸制で契約をしているのに年俸通りの給与が支払われていないのであればブラック企業ですが、ボーナスがないからブラック企業というわけでもないのです。
委託給食会社は休みがとれない→求人と契約書を確認してみよう
雇用契約書で年間休日120日の契約をしていて、それ以上出勤しているのに休日手当を支払っていないのであればブラック企業です。でも、年間休日89日の給食会社で「休みが少ないから委託給食会社はブラックだ」と思っているなら、それは言いがかりに該当します。
日本では法律で「法定休日」と「所定休日」の2つが定められています。
「法定休日」は労働基準法に基づいて従業員に必ず与えなければならない休日です。最低でも1週間に1日、4週間で4日以上の休日を与える必要があります。
次に、所定休日とは「使用者が労働者に与える」休日です。多くの企業では、1週間のうち5日を労働日、2日を休日として週40時間勤務としています。
つまり、労働基準法では最低週1回の休日を与えれば良いのです。それ以上の休日を与える義務は法律上ありません。
給食会社は年間休日を「法定休日と所定休日を合わせて」105日としている会社が多く、稀に89日や120日という会社もあります。休みがたくさんほしいのであれば、年間休日日数の多い会社で働きましょう。
原因②給食会社が違法なことをしている「真のブラック企業」である
給食会社の中には、法令違反をしていて従業員に訴えられている会社やクライアントには言えないような給食運営をしている会社もあります。そのような企業は、真のブラック企業です。もし、アナタが勤務している会社が次のような企業であれば、転職を視野に入れて動きましょう。
委託給食会社でサービス残業が多いならブラック企業
ブラックな給食会社では、従業員にサービス残業をさせます。給食会社の収入はクライアント側からもらえる給食委託料。それ以上の収入は得られないので、予算よりも多くの人件費をかけると赤字になります。
それを補うのは、現場の栄養士ではなく経営者です。しかし、ブラックな給食会社では目標の人件費を達成させるために栄養士や調理師にサービス残業さをさせている企業もあります。
委託給食会社で休みがないならブラック企業
給食の現場は常に人手不足です。365日3食の給食を止めることはできません。しかし、人がいない。そのようなときに、栄養士や調理師の休日が月に1,2日しかないという会社もあります。
これは、明らかな違法労働ですが、現場に入っていると「休みをとったら食事がとまってしまう」という責任感で出勤してしまう人もいるでしょう。
このような違法な労働をさせている会社は、ブラック企業です。長く管理栄養士・栄養士をしていると人生で数回くらいは経験することかもしれません。でも、まともな法人であれば人事部や管理職が指導します。休みを与えないことが当たり前になっている給食会社は明らかなブラック企業です。
委託給食会社で怒鳴られたりいじめられたならブラック企業
他人に怒鳴りつけたり、無視をしたり、明らかにこなせない仕事をおしつけたり、仕事を教えなかったり…このようなトラブルはパワハラに該当します。
明らかないじめやパワハラがあるのに、相談窓口を設置しておらず、相談先もない会社はブラック企業です。人間関係のストレスはどの職場でもありますが、いっこうに解決しない場合や被害者と加害者が明確なケースを放置しているのは社会的に許される企業ではありません。
委託給食会社で労災が使えないならブラック企業です
給食会社の仕事では、火や包丁を扱い、重たいものを持つシーンがたくさんあります。当然、従業員はケガのリスクを背負っていますよね。
仕込み作業をしているときに、包丁で手を切ってしまって、傷が深いから念のために病院を受診したとします。このとき、治療費は労災保険から出ますよね。
給食会社では、責任者が労災の知識がない場合や、管理職側が労災を使わせたくないということもあります。しかし、労災保険を使わなければならないシーンで使わせないのであれば、その勤務先はブラック企業です。
委託給食会社がクライアントに言えないような給食運営をしている
給食会社は、材料費や人件費をコントロールして利益を出していく企業です。
そのため、材料費がギリギリだから刻み食やミキサー食のようなバレにくい食事形態で材料を十分に使わない、栄養基準を満たない給食を出す…などをやっている会社もあるでしょう。
今もこのような運営をしているかどうかはわかりませんが、この類の不正は食事を食べる人へ影響を出す(これが原因で低栄養になる人がいる)ことであり、コンプライアンス違反です。
若い栄養士さんはこのような現場に遭遇してもどう対応したらいいか分からないでしょう。コンプライアンス違反を平気で命令するような給食会社はブラック企業です。
とはいえ、委託栄養士の環境はブラックと感じるくらいハードです
今回の記事では、栄養士側が知識不足で委託給食の悪口を言っているだけじゃないか、という趣旨で記事を書きましたが
あー!!もう委託栄養士は嫌!ブラック企業だ!つらいつらい無理!
と思うことは、別に間違いではありません。ただ、ネットでは業界の構造上仕方がないことに対してもブラックだ!と騒いでいるものが多いなあという印象があり、今回の記事を書いてみました…。
私自身、もう委託給食の栄養士はしたくないです。理由は「根無し草のように安定していないよそ者感」を感じるから。給食会社ってどんなに仕事を頑張っても、クライアント側の経営者(業者選定の権限がある人)の判断で職場がなくなってしまいます。同僚の多くはパートさんやクライアントになり、栄養士同士で切磋琢磨することも難しいです。結構さみしいんですよ。
いつまで働けるか分からない派遣社員のような不安定さも感じてしまうので、給食をやるなら絶対直営給食で働きたいです。栄養管理の仕事も、給食の仕事も好きですが、直営給食でないと、私は頑張れない。
とはいえ、委託給食会は、直営給食よりも衛生管理に厳しい傾向があり、大企業であれば保育園や施設、急性期病院までいろいろな厨房での勤務も可能です。委託給食で働くメリットもあります。でも、1つの職場で仲間を作りながら安定した給食運営をしたい!食べる人の近くで働きたい!いつかは管理栄養士の仕事もしたい!と思うなら、委託給食会社で働くべきではありません。
昨今は直営給食でも人手不足ですから、管理栄養士の免許があれば可能性は無限大です。求人の探し方はこちらの記事でも解説しています。自分で求人を探すのが面倒なら栄養士人材バンクのような栄養士向け転職エージェントに登録しておくと担当者が求人を探してきてくれますよ。
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